公開日 2024/04/12 11:45
変更日 2024/09/19 10:04
CANNES, FRANCE - MAY 26: Lee Ji-eun attends the screening of \"Broker (Les Bonnes Etoiles)\" during the 75th annual Cannes film festival at Palais des Festivals on May 26, 2022 in Cannes, France. (Photo by Marc Piasecki/FilmMagic)
韓国ドラマは面白い。もはや議論の余地はないだろう。便利な配信の時代となり、韓国エンタメの良作をコンスタントに視聴することができる。中でも韓国内では2019年に放送された、IU主演の『ホテルデルーナ』は“沼る”ドラマと話題だ。本当にそうなのか。“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。
2008年に日本レコード大賞を受賞したEXILEの「Ti Amo」などを手掛けたことで知られる音楽プロデューサー松尾潔さんの音楽エッセイ『松尾潔のメロウな季節』を読み返していると、興味深い記述があった。
韓国映画熱にうなされるにはこの1本で十分だった
これは松尾さんが東京・文京区にかつて存在した「三百人劇場」で行われた「韓国映画の全貌」上映のオープニング作品、イム・グォンテク監督の『キルソドム』(1985年)を観て感じたこと。この感覚はすごくわかる。1895年の誕生以来、映画はフランス、アメリカ、ドイツ、日本、イタリアなどなど、世界各国の各年代でそれぞれの黄金期を経てきたけれど、韓国映画は2000年以降の「韓国映画ルネッサンス」が韓流ブームのきっかけになった。現在でも空前のK-POPブームと同期するように、映画やドラマなど、韓国作品は広く愛好されている。でもそんなブームとは別軸でコアな映画ファンの興味と関心を満たす感嘆すべき韓国映画がある。例えば、チャン・リュル監督作品がそう。ぼくは『慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ』(2014年)で描かれたあの古墳の世界を観てもうたまげてしまった。これこそ映画的だとうならせる体験がそこにはあった。こうしたやや特異で作家性の強い作品との出会いが発火点となって、もはや世界には韓国映画しか存在していないかのような浮かれる気持ちは“韓国映画熱”としかいいようがない。
それが忘れた頃に定期的にやってくるのも特徴。映画だけでなく、ドラマ作品ともなるとこれがより大衆的な魅力として発動されるものだから、ほんとうに厄介でもある。韓国ドラマを見始めたら、もう止まらなくなる経験は多くの人と共有できるだろう。ぼくは最近、『梨泰院クラス』(2020年)で悪役だったアン・ボヒョンが意外にも初主演だというドラマ『軍検事ドーベルマン』(2022年)を見て、次のエピソードへの再生ボタンを押す手が止まらなかった。どうしてこんなにも面白く、人の興味を簡単に引く物語が紡げてしまうのか。そんなことを考えながら、今話題のあるドラマ作品に自然と関心を寄せた。