公開日 2024/06/30 15:00
変更日 2024/08/30 15:38
TOKYO, JAPAN - FEBRUARY 14: Actor Ryohei Suzuki attends the 78th Mainichi Film Awards on February 14, 2024 in Tokyo, Japan. (Photo by Jun Sato/WireImage)
鈴木亮平主演の実写化映画『シティーハンター』がNetflixで配信されている。「週間グローバルTOP10」初登場1位など、世界各国で注目を集めているが、本作の健闘を踏まえて考えるべきは、日本のエンタメ作品が韓国に20年遅れを取っていることに言及した鈴木の指摘ではないだろうか? コラムニスト・加賀谷健が解説する。
今、エンタメの世界には、しかるべき歴史感覚を持ち、感覚だけでなくロジカルな思考で物事を考え、見極められる人による誤読の余地がない言葉が必要である。それは、批評家やジャーナリスト、ライターだけでなく、できることなら、エンタメ作品の顔となる最前線の俳優やアーティストの言葉であることが望ましい。でも、そうした淡い期待に満足いく語彙力と論理で(ポテンシャルはあるのに)応じてくれる俳優やアーティストはあまりに少ない気がする。
世界中で同時に起きている危機的状況に対して、フワッとしたヒューマニズムをさらに抽象化したような作品を発表するのではなく、同時代人として腰を据えて、アクチュアルなメッセージを発することを彼らに求めるのは難しいことなのだろうか? 特にこの日本においては……。俳優は俳優に徹したらいい。政治的発言なんか求めてない。そんな声をよく耳にする。ポリティカルな文脈で語られる作品でソーシャルな役柄を演じた俳優が、作品内だけでなく外の現実世界でも役柄同様にコンシャスな振る舞いをしてほしいと思えば、いやいや役柄と俳優本人を混同するなと釘をさされる。
でもほんとうにそうだろうか。俳優はどこまでもカッコいい。ぼくらはその佇まいに憧れる。だったなら、その生き方だってカッコよくあってくれ。業界内の“政治”にばかり関心を示している場合じゃない。ひとりの人間として最低限の正しい言葉を。そんな願いを仮託すべき俳優がいる。鈴木亮平だ。がっしりした体躯。鋼の肉体。見た目からして、頼りがいがあるというか、骨太。この人はときに高学歴俳優として紹介されることもあるけれど、そんな表面的な情報だけで解析できない、リアルで、繊細な言葉を持った人。世界遺産好きでも知られ、『世界遺産』(TBS)では今年から9代目のナレーターを担当している。世界各地の歴史にも通じている彼なら、日本のエンタメの過去と現在をつなぎ、未来の土壌を固めてくれるかしら。