COLUMN コラム

カンヌ国際映画祭パルムドール受賞『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督と主演ソン・ガンホ来日!

公開日 2019/12/27 08:00

変更日 2024/08/01 16:53

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『殺人の追憶』『グエムル -漢江の怪物-』『スノーピアサー』の監督ポン・ジュノ(50)と俳優ソン・ガンホ(52)。03年『殺人の追憶』で初来日し、06年『グエムル -漢江の怪物-』で再来日。以来、二人そろって日本で登壇するのは実に13年ぶり。今回4度目のタッグを組む二人は、互いをリスペクトしあう最強のパートナーだった!

12月26日(木)ザ・ペニンシュラ東京で行われた記者会見の冒頭、ポン・ジュノ監督は「多くの国で公開されている本作をついに日本でもお話できることになり、とても嬉しく思います。ソン・ガンホ先輩と一緒に来られたことに意味があります」と、2歳年上のガンホに敬意を表した。

ソン・ガンホも「私自身としては『弁護人』以来3年ぶりの来日になりますが、特に今回はポン・ジュノ監督とこうして二人で日本の皆様にご挨拶できることを嬉しく思います」と会見はスタート。

先の読めない凄まじすぎる展開ゆえ、かねてよりポン・ジュノ監督から「ネタバレ厳禁」が発令された本作。
映画というエンターテイメントの枠を超えた【ポン・ジュノ・ジャンル】とでもいうべき熱量をはらんだ本作のベースとなったものは一体何なのだろうか?

「大学生の息子が裕福な一家に家庭教師に行くところから物語が始まります。実は私自身、お金持ちの家で男子中学生の家庭教師をしたことがあり、豪邸というものを隅々まで見たり、他人の私生活をのぞき見するという経験をしたことがありました。そのアルバイトを紹介してくれたのは当時のガールフレンド、現在は私の妻…。なんとなく映画の設定と似ていますね(笑) 幸い私は2ヶ月でクビになったので、映画のような“事件”に遭うことはありませんでしたが、シナリオを書いている間は当時の記憶が蘇りました」と自身の実体験を映画に活かしたことを明かした。

監督ポン・ジュノ

貧困家族と富豪家族に起こる事件を独特のタッチで描写!

世界の賞レースを賑わせ、大きな注目を集めている本作だが、ポン・ジュノ監督いわく「この反響はまったく予想していなかった。これまで通り淡々と映画を撮ったので、素晴らしい俳優が織りなす感情表現という“万国共通の言語”が評価され、“楽しいアクシンデント”をいただいたような気分」と謙虚に語る。さらに「富める者と貧しい者が、ヒーローや悪党として定義されていない。本作には明確な悪党は登場しないのです。なのに、おぞましい事件が起こってしまう。善人と悪人が分かれていないところが共感を得ているように感じます」と述べた。

ソン・ガンホは「約20年にわたる監督の努力が本作で実を結び、多くの共感を得られたのです」と惜しみない賛辞を贈り、加えて「本作のストーリーは韓国に限らず、地球上に生きている全ての人々の物語。貧富の差や葛藤を描くだけではなく、今の時代、私たちがどう生き抜くべきかを考えさせてくれる現実味のある部分が共感を呼んだのだと思います」と分析した。

主演ソン・ガンホ

キャスティング秘話

ソン・ガンホは、主役にキャスティングされる過程を語ってくれた。
「毎回、ポン・ジュノ監督が構想を練っている段階から、私に対して巧妙かつ小出しに話を持ちかけながら、出演を誘われるというパターンです。
裕福な家庭と貧しい家庭が登場する本作では、年齢も品位も高まっている私は、当然、裕福なほうの夫を演じるものだと思っていましたよ。まさか半地下に連れて行かれるとは…!!」と会場の笑いを誘うと、すかさず監督が「(日本語で) ほんとうにすみませんでした」と茶目っ気たっぷりに頭をさげる一幕も。

ポン・ジュノ監督は「ソン・ガンホ先輩とチェ・ウシクさんの二人は構想の段階から想定していました。二人にも私の意向を伝え、俳優の個性を分かった上でキャクター描写に役立てました」と語った。

二人の次回作は『梅雨時の男』!?

20年来の同志としてヒット作を世に送り出してきた二人。
ポン・ジュノ監督のデビュー作『ほえる犬は噛まない』を観た時の衝撃をソン・ガンホは「非凡な才能を持つ映画作家にして芸術家。ポン・ジュノ監督の新しい世界を常に見たい、深まっていく野心を見たい」と引き続きタッグを組みたいと願いつつも、「でも今は心変わりし、大雨とか半地下が出てくる映画はお断り(笑)」とも。
すると監督は「実は、次にガンホ先輩に渡そうと思っていたシナリオのタイトルは『梅雨時の男』っていう作品なんですが…」とまさかの突然のオファーに、ガンホも思わず「(日本語で) ありがとうございます」と言わざるをえなかった。

ソン・ガンホが語るポン・ジュノ監督の魅力──

「常に社会というものを、鋭く、温かく、冷淡な視線で見つめている監督なので、全てを抱えて生きている人々の心の叫びが『パラサイト』という芸術の到達点として完成したのだと感じます。
ポン・ジュノ監督の進化の終着点は一体どこなのだろうか?『パラサイト』の次に来るリアリズムの発展形はどんなものになるのだろうか?それを考えると脅威でもあり、心待ちでもあります。そんなドキドキさせてくれる唯一無二の監督ですね。
それと、俳優に対して無理なことは絶対にさせない……はずなのに、監督自身がポッチャリ体型だからなのか、なぜかいつも私の役作りのために「太ってくれ〜」と望むので、そこだけはちょっと理解できない(笑) 」

ポン・ジュノ監督が語るソン・ガンホの魅力──

「演出家という立場から言わせて頂くと、世界で最も早く、最も近くで、ソン・ガンホいう名優から放たれる本能のように生々しい演技を目撃できる瞬間は、本当にゾクゾクします。ガンホ先輩を想定してシナリオを書いている段階で、すでに彼の凄さが私には分かるのです。
本作のクライマックスは議論になるようなシーンなので私は悩みました。でもガンホさんの顔を思い浮かべたら不思議と安心感で満たされ、シナリオを完成することができました。つまり、“ソン・ガンホであれば観客を説得させることができる”という信頼感が常にあった。困難を突破してくれる存在です!」

フォトセッション

和やかなムードのなか会見は終わり、フォトセッションへ。その時、映画ポスターのパネルが倒れそうになり、ソン・ガンホ先生がとっさにキャッチ!ステキすぎるファインプレーでした!!

取材・文・撮影 三輪 泰枝 



【STORY】
家族全員、失業中。日光も電波も弱い“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家の浪人生ギウは、エリート大学生の友達に家庭教師の仕事を紹介される。身分を偽り訪れた先は、IT企業を経営するパク社長一家が暮らす“高台の大豪邸”。思いもよらぬ高給の“就職先”を見つけたギウは、続けて美術家庭教師として妹ギジョンを紹介する。徐々に“パラサイト”していくキム一家。しかし彼らが辿り着く先には、誰にも想像し得ない衝撃の光景が待ち構えていた──。

監督:ポン・ジュノ

キャスト:
ソン・ガンホ
イ・ソンギュン
チョ・ヨジョン
チェ・ウシク
パク・ソダム

原題 : 기생충(英題:Parasite)
2018年 韓国映画/132分
配給ビターズエンド

2020年1月10日(金)より全国ロードショー
2019年12月27日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて特別先行公開

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