公開日 2023/04/08 19:30
変更日 2024/06/20 14:33
Leslie Cheung Kwok-wing in the Wong Kar-wai 1990 movie \"Days of Being Wild\". (Photo by MICHAEL TSUI/South China Morning Post via Getty Images)
2003年4月1日。香港映画の大スター、レスリー・チャンが換気のために唯一開いていたホテルの窓から飛び降りた。その日から丸20年の月日が流れた。レスリーを代表する名作の韓国リメイク作品の日本版主題歌「a better tomorrow」を聴いて今、想うこと。
韓国版のキム・ガンウに比べ、レスリーが演じたオリジナルの弟キットは、悲しみをより強くまとっている。レスリーの魅力というのは、童顔でチャーミングな容姿だが、それとは裏腹に、どこからか漂ってくる危うげな雰囲気にある。ウォン・カーウァイ監督作『欲望の翼』(1990年)で演じた主人公の破滅的な姿は、まるでレスリーの生涯と重なる。
レスリーが自ら命を断ったのは、2003年4月1日のこと。ホテルの高層階から飛び降りたというニュースは、香港国内にとどまらず、全世界がエイプリルフールの嘘だと信じて疑わなかった。それくらい衝撃的な出来事だった。『欲望の翼』の主人公の顛末のように、レスリーのスター性が行くところまで行き着きいた結果なのかもしれない。
2022年に「BTS」のメンバーVが、『欲望の翼』でレスリーがマンボを踊る場面の動画をInstagramに投稿して話題になった。レスリーが体現した悲しみのスター像は、後世のアーティストからもリスペクトを受けているのだ。『男たちの挽歌』続編である『男たちの挽歌 Ⅱ』(1987年)では、レスリー演じる弟刑事が、クライマックスで敵の殺し屋が放った糾弾に倒れてしまう。若きレスリーが殉死する姿が何とも象徴的だった。