公開日 2023/10/06 11:45
変更日 2024/08/28 12:21
LAS VEGAS, NEVADA - APRIL 03: Jungkook of BTS performs onstage during the 64th Annual GRAMMY Awards at MGM Grand Garden Arena on April 03, 2022 in Las Vegas, Nevada. (Photo by Emma McIntyre/Getty Images for The Recording Academy)
BTSのジョングクがJIMINに続いて全米チャート首位を獲得した。かと思えば、早速新曲をドロップしてくる。ソロアーティストとしてのグクの魅力。それは大衆性と芸術性の両立にある。R&Bをこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、リスナーを揺さぶり続けるジョングクの音楽世界を解説する。
実は仕掛け人がいる。この曲をプロデュースしたのがアンドリュー・ワット。この人が手掛けた近年の最重要曲は、ジャスティン・ビーバーと共作した「Peaches feat.Daniel Ceasar & Giveon」。アンビエントR&Bの新生ギヴィオとダニエル・シーザーをフィーチャーした力作ポップR&Bナンバーとして、2020年の全米チャートでは首位を獲得した。同チャートアクションでは、「Seven(feat.Latto)」もまた初登場で首位を獲得。BTS「Dynamite」での同チャート首位の歴史的快挙を思い出すまでもなく、韓国人ソロアーティストとしては、グループメンバーのJIMINが「Like Crazy」で先に首位に輝いている(4月8日)。たかだか数ヶ月のうちにグクがさらに歴史を更新しようとは、いやはやK-POPの躍進恐るべしである。
さて、冒頭でイギリスのボーカルグループをあげておいたように、ぼくの今年のベスト2ソングは、いずれもジャンル的にはR&Bということになる。これがアメリカ人ではなく、イギリス人と韓国人によるところが粋ではないか。何よりソロシンガーとしてのグクは基本的にはR&B文脈で考えられるべきだろう。
BTSの「Telepathy」など聴いていると、これはもう完全にブラック・ミュージックのビート感、サウンドだなと思える。黒人的な泥臭さを薄め、ポップに仕上げることで、より万人の耳に耐えうるようにはなってはいるのだが、BTSにはそもそもソウルやR&Bの素養やマナーがしっかり根付いている。メンバーがソロになることで、そうしたルーツがより深化されているのだ。だからこそアンドリュー・ワットのプロデュースは満を持しての登場と考えられ、世界のトレンドにうまく歩調を合わせながら、彼がヒットを請け負うことで「Seven(feat.Latto)」のヒット自体が必然的だったと理解できる。