公開日 2023/10/08 10:00
変更日 2024/08/28 12:36
BUSAN, SOUTH KOREA - OCTOBER 04: Actor Chow Yun-Fat of Hong Kong attends opening ceremony of the 28th Busan International Film Festival on October 04, 2023 in Busan, South Korea. (Photo by Han Myung-Gu/WireImage)
香港映画の魅力。それは兎にも角にも暑苦しい男同士の友情に尽きる。いくつもの胸アツ場面を演じてきた3人の名優たち。チョウ・ユンファ、ドニー・イェン、真田広之が繰り出すアクションには誰もが心を動かされるだろう。
釜山国際映画祭ではチョウ・ユンファの代表作『男たちの挽歌』(1986年)、『グリーン・デスティニー』(2000年)、『ワン・モア・チャンス』の3作品をプログラミングした特別上映が行われるようだが、過去に香港映画の連載コラムを書いていたぼくからするとちょっと物足りない気もする。香港映画がハリウッド映画ばりのスター・システムをフル稼働して最も輝いていた1980年代、所謂“香港ニューウェーブ”の潮流の中、男同士の厚い友情映画(香港映画オタクの間では“パンヤウ(朋友)作品”と呼ぶ)をスクリーンで再映してほしいものである。その意味ではジョン・ウー監督作が含まれているが、欲を言ったらリンゴ・ラム監督の激アツ作品であり、香港版アカデミー賞「香港電影金像奨」最優秀主演男優賞を受賞(第7回)した『友は風の彼方に』(1988年)か。
すこし変り種だと、俊英ソイ・チェン監督の『モンキー・マジック 孫悟空誕生』(2014年)もいい。西遊記の世界でチョウ・ユンファは天界の玉帝を演じ、アーロン・クォック扮する牛魔王を成敗した。なるほど、帝王にはぴったりな役柄だったが、それ以上に異彩を放ったのが孫悟空役のドニー・イェンだった。ブルース・リー以降のカンフー・マスター俳優なら、ドニーかトニーか、である。どちらも詠春拳のマスターであるイップ・マンを演じているが、前者は「イップ・マン」シリーズで孤高の達人技を披露し、後者は巨匠ウォン・カーウァイ監督作『グランド・マスター』(2013年)で華麗なるカンフー美学を体現した。
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個人的にはイップ・マンが憑依し、強靭な精神性にまで深め、高めたドニー脅威のアクションに軍配を上げたい。イップ・マンのイメージが強いドニーだが、「スター・ウォーズ」スピンオフ作品『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)では盲目の戦士チアルートを哀切まじりに演じ、現在公開中の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でもまた盲目の殺し屋を熱演している。目が見えずとも、相手の気配を感じた途端にスパパパパンとやっつけてしまう。肉体の衰えも全然感じない。むしろ動作のキレは増している。リアル戦士なドニーが捨て身で戦う姿は必見だ。