公開日 2023/11/29 20:00
変更日 2024/08/29 17:38
SUNGNAM, SOUTH KOREA - OCTOBER 19: South Korean actor and model Nam Joo-Hyuk aka Nam Ju-Hyuk signs autographs for fans for 'CHOPARD' Parfums at Hyundai Department Store on October 19, 2019 in Sungnam, South Korea. (Photo by Han Myung-Gu/WireImage)
韓国ドラマ『ヴィジランテ』が、Disney+で配信中だ。主演はナム・ジュヒョク。法外の私的制裁によって悪玉たちを次々打ちのめしていく。善と悪の境目を問う社会派作品であり、ジョヒョクにとっては兵役前最後の主演作品。「イケメン図鑑管理人」のぼく、加賀谷健が解説する。
Disney+(ディズニープラス)で配信中の韓国ドラマ『ヴィジランテ』は、ヴィジランテ作品の新たな金字塔ではないかと思う。真の正義はないのか。だとするなら、自分がやるしかない。ドラマ『スタートアップ:夢の扉』(2021年)や『二十五、二十一』(2022年)などのナム・ジュヒョク扮する主人公キム・ジヨンは、法の下の正義に疑問を感じながら、法外で復讐を遂げる。第1話冒頭から、いきなり激しいアクションで、憎い相手を徹底的に打ちのめす。夜の冷たい外気。怪しげな薄闇の路地。恰好の舞台をそろえ、演出を施すロングショットが冒頭から深く印象に残る。
フードをかぶるジヨンの表情は陰鬱としていながら、目だけが妖しく光る。怪物的な怪力。ただ者ではない。これこそ、ぼくらが求めている理想的なアンチヒーローの姿ではないか。アンチヒーローの元祖と言えばクリント・イーストウッドがスターダムにのし上がる『荒野の用心棒』(1964年)で演じた孤高のガンマン役をすぐに思い出す。1971年の出世作『ダーティハリー』では、まさに法外の方法で犯人を追い詰め、打ちのめす狂乱の刑事ハリー・キャラハンを誕生させた。イーストウッド=キャラハンを決定づけた同作こそ、ヴィジランテ映画の草分け的作品だ。
イーストウッドが演じるキャラクターを特徴づける、あの冷たく鋭い眼差しを『ヴィジランテ』のジヨンにも見出したのは気のせいではないだろう。いや、凍てつくヴェンジェンス(復讐)に燃えるアヴェンジャー(復讐者)にしてヴィジランテであるジヨンは、キャラハン刑事よりももっとダークで、闇が深い。本作が新たな金字塔と呼べる理由は、イーストウッドから続くオーセンティックなヴィジランテ作品の系譜を守りながら、それを上回るキム・ジヨンのより一層強烈なキャラクター性によるのだ。