公開日 2024/04/12 11:45
変更日 2024/09/19 10:04
CANNES, FRANCE - MAY 26: Lee Ji-eun attends the screening of \"Broker (Les Bonnes Etoiles)\" during the 75th annual Cannes film festival at Palais des Festivals on May 26, 2022 in Cannes, France. (Photo by Marc Piasecki/FilmMagic)
韓国ドラマは面白い。もはや議論の余地はないだろう。便利な配信の時代となり、韓国エンタメの良作をコンスタントに視聴することができる。中でも韓国内では2019年に放送された、IU主演の『ホテルデルーナ』は“沼る”ドラマと話題だ。本当にそうなのか。“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。
この世とあの世の狭間を舞台にして、夜ごと死者たちが集まるホテルがある。漢江で溺死した女性が青白い顔でチェックインする。重い雰囲気とは違う。なるほど、これは軽快なコメディーだ。自分が死んだのかどうかわかっていない盗人のク・ヒョンモ(オ・ジホ)がまだ完全には死者ではない人間の状態でさまよい込む。ホテル内での些事に目を光らせる社長のチャン・マンウォル(イ・ジウン)はすぐ気づいて問答無用で闖(ちん)入者を裁こうとする。本作冒頭、マンウォルは1000年以上前の戦乱の時代を生きる武人として描かれていたけれど、どうやら現代までこのホテルデルーナの経営を任されているらしい。理由はどうあれ、これは「沼る」という前評判通り、確かに沼りそうな。
韓国ドラマが油断ならないのは、沼ったか沼ってないか判然としない状態ですでに潜在的に沼ってしまっていること。沼り以前の沼り状態だから、知らず知らずのうちにどんどん泥濘にはまり込む。日本のテレビドラマよりだいぶ長尺なのに、気づいたら次のエピソードへの再生ボタンをほとんど脊髄反射的に押しているのはそのためだ。
日本での韓国ドラマブームというと、ヨン様ことペ・ヨンジュン旋風で2003年から放送された『冬のソナタ』をすぐに思い出す。でも放送時の韓国ドラマ視聴と現在では少し意味合いが変わってきていると思う。当時はまだなかったサブスクリプションによるドラマ配信の時代では、韓国ドラマを意識的にしろ無意識的にしろ、浴びるように視聴する前提が整備されているからだ。だから『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~ (以下、ホテルデルーナ)』に沼るという現象自体がもはや当たり前というか、日常的な韓国ドラマ視聴の普遍的な風景にほかならない。 韓国の国民的存在IUが主演であることも象徴的。
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修。 クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。 女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、 テレビドラマ脚本のプロットライターなど。2025年から、アジア映画の配給と宣伝プロデュースを手がけている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。