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シュー・グァンハン&清原果耶W主演『青春18×2 君へと続く道』に台湾の“空気映画”を感じる

公開日 2024/05/02 17:45

変更日 2024/06/20 14:34

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台湾のスーパースター俳優シュー・グァンハンと清原果耶の共演で描く恋愛映画『青春18×2 君へと続く道』が、5月3日(金)から全国で公開される。監督は、『新聞記者』(2019年)の藤井道人。映画化の企画は、チャン・チェン……。コラムニスト・加賀谷健が、台湾を舞台に俳優との有機的なつながりを感じる本作を解説する。

待望の“空気映画”

 映画冒頭、できるだけ早い場面がいい。町の大通りを一匹の犬が横切る西部劇は、だいたい面白いとぼくは勝手に思っている。西部劇なら、犬ということになるが、もちろん別ジャンルの映画なら、別のモノになる。パッと思いつくものだと、そうだな、台湾映画とバイクだろうか。日本だと情感が出しづらいバイクが、なぜだか台湾だと途端にリアルな手触りの絵になる。バイクが走ってきて、誰かの近くを横切る。その誰かはバイクが運び込み、残していく風を感じる。さわやかである。バイクと誰かがまとう空気。台湾映画とは、まず空気の映画であることを理解しておく必要がある。

 例えば、巨匠ホウ・シャオシェン監督は、台湾の空気を捉え、フィルムに定着させた稀有な存在。空気は本来、可視化できない。なのに、『冬冬の夏休み』(1984年)など、シャオシェン監督のロングショットには生々しい映画的な空気が充満している。『恋恋風塵』(1987年)では、バイクで疾走する男女がまとう空気のリアルを伝えた。他の台湾人監督たちもそれぞれに空気を可視化しようと苦心するのだが、一歩間違えば、これは単なる雰囲気の画面に終始してしまう。雰囲気の映画ほどつまらないものはない。

(C)2024「青春18×2」Film Partners

台湾映画ミュージック・ビデオにすり替わったような傾向にある近年はそういった雰囲気の画面が散見され、なかなか本物の空気映画にお目にかかることができなかった。でもここにきてひとりの日本人監督がやってくれた。藤井道人監督の最新作『青春 18×2 君へと続く道』は、まさに待望の空気映画だ。冒頭、ゲーム会社の経営がご破算になったジミー(シュー・グァンハン)が失意のうちに地元に帰ってくる。そこらを当て所もなくぶらぶらしていると、向こうからぶぃーんと一台のバイクが走ってくる。ジミーの側を横切る。彼がまとうスクーターの空気。それが映画的な外気として確かに可視化されているように見えた。

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加賀谷健