公開日 2024/05/16 11:45
変更日 2024/09/09 16:35
BEIJING, CHINA - JANUARY 4: (CHINA OUT) Zhang Zhen arrives at the premiere of \"Red Cliff Part 2\" on January 4, 2009 in Beijing, China. (Photo by China Photos/Getty Images)
シュー・グァンハンと清原果耶が共演し、藤井道人監督が演出する。しかも映画化の企画者がチャン・チェン。5月3日から全国で公開されている『青春18×2 君へと続く道』はそんな豪華な布陣の作品だが、この機会に本作の立役者チャン・チェンの活躍を振り返っておきたい。コラムニスト・加賀谷健が解説する。
(C)2024「青春18×2」Film Partners
人生でつまずいた主人公が里帰りする。特に目的があるわけではない。ただその場所を始点にもう一度歩き出すため。といっても、その新しい第一歩は、力強く踏み出されるものでもない。ただなんとなくの一歩。さらにまた一歩。という具合に地元をぷらぷら歩いていると、向こうから一台のバイクがやってくる。ジミー(シュー・グァンハン)の横を通り過ぎる。『青春18×2 君へと続く道』冒頭近くのこの場面を見て、あぁなんて映画的な瞬間なんだろうと思った。
日本映画にはない台湾映画の良さ、エッセンスが漂ってくるのは、きっと立役者がいるからだろう。台湾出身のジミー・ライによる紀行エッセイを原作とする本作の映画化を企画したのは、チャン・チェンなのだ。その固有名詞を聞いただけで、映画ファンなら背筋がピンとなる。いや、でももしかすると世代によってはあまりピンとこないかもしれない。それなら例えば、今をときめくハリウッドの至宝ティモシー・シャラメ主演の『DUNE/デューン 砂の惑星』(2020年、以下、『DUNE』)はどうか。
同作でシャラメ演じるポールの主治医を演じているのが、チャン・チェンその人。1991年のスクリーンデビューからまさかシャラメの超大作で重要な役どころを担うなんて。キャスティングにどこまで口を出しているのかわからないが、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督はきっとチェンのファンなんだろうと思う。フランシス・フォード・コッポラ監督が『ゴッドファーザー』(1972年)でアル・パチーノのボディーガード役としてフランコ・チッティを配役していたように、脇役は趣味の領域でもあるからだ。なら、『青春18×2 君へと続く道』の藤井道人監督はどうかというと、企画者でありエグゼクティブ・プロデューサーでもあるチェンとともにした現場はやっぱり夢のような体験だったよう。その体験が台湾映画的な雰囲気が流れる画面上の現実としてちゃんと経験できるのだから、映画というのは長い時を経て不思議な縁でつながっているものだ。