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BTS Vは“オペラ的な人”? 音域と声質から考える低音と名盤『Layover』の魅力

公開日 2024/06/10 20:00

変更日 2024/09/04 13:17

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我らがテテこと、キム・テヒョンは、その実、“オペラ的な人”ではないかと考えるようになった。そのバリトンボイス。深みのある声質。などなど、オペラや声楽の視点から考えるBTS Vの魅力がある。イケメン研究をライフワークとするコラムニスト・加賀谷健が解説する。

 1787年、モーツァルトがプラハで『ドン・ジョバンニ』を初演した。でも初演以外は、散々なものだった。当時の聴衆には演出があまりに斬新で受け入れがたかったのだ。今なら誰でもモーツァルトが偉大なクラシック音楽の作曲家であると知ってるけれど、クラシックだろうがポップスだろうが、開拓者の音楽はいつの時代も理解されなかったことに変わりはない。同じように、ニューオーリンズからジャズが伝来したときにも同様の拒否反応が起こった。

 ヨーロッパの楽団やジャーナリストはこぞってジャズ叩きに奔走した。新しいジャンルの音楽であるジャズのグルーヴィーな勢いが誰にもとめられるはずがなかったのは言うまでもない。それぞれ音楽史の変節を持つクラシックとジャズもVの手にかかると、うまく掛け合わされてしまう。Vの場合は、両ジャンルを横断し、美しい音色で通底し、ぴかぴかな見た目から金管楽器と思われがちな木管楽器のフルートによって。

 2023年にリリースしたEP『Layover』のリードトラック「Slow Dancing」で、フルートを演奏するのは、シンガーソングライターであり、マルチ奏者でもあるコーシャス・クレイだ。Vのボーカルメロディーにそっと寄り添うような温かみのある音色は、後続リリースされたふたつのリミックスバージョン(「FRNK Remix」と「Cautious Clay Remix」)でさらに際立っている。コーシャス・クレイのフルートは、カウント・ベイシー楽団で演奏したフランク・ウェスのような遊び心があるが、Vのソロ曲全体として考えると、バロック期に活躍したフルートの名手ピエール=ガブリエル・ビュファルダンの優雅なたたずまいを思わせる。『Layover』が、ジャズやポップスだけでなくクラシックの文脈から考えてもポップス史に残るべき名盤である理由がこのあたりにあるとぼくは考えている。

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加賀谷健