COLUMN コラム

20年分の遅れを取り戻す鈴木亮平の試み。主演映画『シティハンター』は、“国内外共闘作品”ではないのか?

公開日 2024/06/30 15:00

変更日 2024/06/30 22:12

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鈴木亮平主演の実写化映画『シティーハンター』がNetflixで配信されている。「週間グローバルTOP10」初登場1位など、世界各国で注目を集めているが、本作の健闘を踏まえて考えるべきは、日本のエンタメ作品が韓国に20年遅れを取っていることに言及した鈴木の指摘ではないだろうか? コラムニスト・加賀谷健が解説する。

作品と演技の延長

 とは言え、ここはひとまず役柄と俳優本人をわけて考えてみることにしよう。俳優としての鈴木亮平があらゆる出演作品でこれまで体現してきたのは、さっきも言ったように鋼の外面であることは間違いない。一方で演じるキャラクターの内面的には、決して強がってばかりはいない。ひとりの人間が感じる弱さも弱さとしてちゃんと引き受ける。そんな等身大のキャラクター像を演じるところに、広い共感と感動を集める理由がある。

 それでいて、弱さとしっかり向き合った上で、それを強さへ昇華させることをおこたらない。救急救命医を演じ、第4回アジアコンテンツアワードで主演男優賞を受賞した『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS、2021年)の劇場版『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2023年)では、弱さと強さが合致する複合体のような、およそ鈴木亮平にしか体現できないキャラクター像を浮かび上がらせた。強大な政治権力に忖度(そんたく)する人間的な弱さを持ちながら、頭が切れ、テレビ局内からの尊敬を集める記者・斎藤正一を演じた『エルピス-希望、あるいは災い-』(関西テレビ・フジテレビ、2022年、以下、『エルピス』)もしたたかなバリエーションのひとつだった。着飾るファッションで武装して内面の弱さ、もろさをひた隠しにして、気丈にふるまう『エゴイスト』(2023年)のゲイ役は、屈指の名演に数えられもする。

 では、それらの代表的演技は、画面の外の世界に一度出てしまえば、鈴木亮平本人とは全然関係がないことなのだろうか。演技とは俳優にとって未知の世界を体験することだとするなら、ロバート・デ・ニーロのメソッドを思い出すまでもなく、極度の内面的役作りで日常生活にも影響が出てくることだってあるだろう。逆に日常での気づきが演技の肥しになることだってある。作品世界で他者の生活を疑似体験する演技と俳優の日常は、むしろ不可分なのである。ポリティカルな役柄を演じた俳優に演技以外でもポリティカルな言葉を求めるかどうかは別として、でもそうした言葉は常に作品とその演技の延長にあることを押さえておくべきではないのか。

Netflix

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加賀谷健