公開日 2024/06/30 15:00
変更日 2024/08/30 15:38
TOKYO, JAPAN - FEBRUARY 14: Actor Ryohei Suzuki attends the 78th Mainichi Film Awards on February 14, 2024 in Tokyo, Japan. (Photo by Jun Sato/WireImage)
鈴木亮平主演の実写化映画『シティーハンター』がNetflixで配信されている。「週間グローバルTOP10」初登場1位など、世界各国で注目を集めているが、本作の健闘を踏まえて考えるべきは、日本のエンタメ作品が韓国に20年遅れを取っていることに言及した鈴木の指摘ではないだろうか? コラムニスト・加賀谷健が解説する。
そんなことをひとつの形にしてくれる鈴木の発言が以前話題になった。『だれかtoなかい』(フジテレビ)での賀来賢人との対談で、「我々は日本国内だけに向けて作品を作っていたけど、気がついたら海外、例えばお隣の韓国に20年くらい差をあけられちゃったっていう危機感がある」と日本のエンタメ作品を取り巻く状況に言及したのだ。『エルピス』で権力側についた斎藤だったら、わざわざこんなこと言わないだろう。日本のエンタメ人はこれくらいの指摘でもネット上でセンシティブに扱われてしまう。そんな言論の弱さに対して、鈴木の力強い発言は清々しい。日本映画の黄金期はもはや遠い過去だし、国内市場にかまけた文字通りドメスティックなJ-POPはK-POP勢の足元を見つめるばかり。昨年6月にYOASOBIの「アイドル」が米ビルボード「グローバルチャート」で首位を獲得する快挙を果たしたが、あくまでアメリカ市場をのぞいた結果でしかない。
どうするよ日本エンタメ。鈴木の発言が20年分の遅れという事実に今さらながら気づかせてくれる。しかも有言実行の人である鈴木は、主演最新作『シティハンター』で少しでも遅れを取り戻そうと試みているかに見える。北条司による人気漫画初の国内実写化作品として、日本人がスタッフの多くを占める。でも国外の力持ちの協力だって忘れない。ポップでクリアなトーンを色濃く画面内に定着させているのは、アジアのディズニーと呼ばれる韓国のデクスタースタジオのカラーリング技術あってこそ。同スタジオは、2020年にアジア映画初のアカデミー作品賞に輝いたポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』(2019年)のCGを担当している。
国内から国外へ視野を広げるということは、別に国内スタッフだけで勝負することではなく、他国との共闘を意味している。『シティハンター』は、言わば、鈴木亮平を座長とする“国内外共闘第1弾作品”なのである。鈴木扮する冴羽獠は、裏社会の汚れ仕事を請け負うアンチヒーローだが、「もっこり」への異常な執着が人間的にユーモラスで、弱さと強さを兼ね備えた鈴木亮平的キャラクターの典型でもある。Netflixの「週間グローバルTOP10」では非英語映画でのランキングながら首位という数字をあげたことで日本のエンタメ作品が世界の中で少なからず足跡をつけた。ただし、だからと言って日本のエンタメはやっぱり世界に通用すると断定するのは早急。鈴木亮平というひとりの俳優がひとりの人間として世界を眼差す初動に続くしかないのだから。