公開日 2020/09/20 17:46
変更日 2024/09/03 10:09
女性の生き辛さを描き、韓国で2016年に刊行されるやいなやベストセラーになった同タイトルの原作を女性監督が映画化。初登場1位に輝き賞レースでも受賞を果たし、こちらも大ヒット!
作者のチョ・ナムジュは1978年ソウル生まれ、名門、梨花女子大学社会学科を卒業、卒業後は放送作家として社会派の人気番組「PD手帳」などを10年間担当。テレビの硬派ドキュメンタリーのプロデューサーから作家に転身しているのですが、その前職のキャリアが活かされた構成になっています。
原作はジヨンを診察した精神科医が聞き書きしたカルテのように、たんたんと過去から現在に至る出来事が語られます。 韓国にいちばん多い苗字がキム、82年生まれにいちばん多い女性の名前がジヨン。自己紹介のような、このタイトルには幅広い女性に共通するストーリーだという深い意味が込められているのです。 映画は33歳のジヨンと夫を中心に展開しますが、実はジヨンの母親の生い立ちも重要な背景です。 母親は兄2人、弟1人がいる5人兄弟で育ちます。成績はいちばん良かったのに男兄弟を進学させる学費を稼ぐため姉と紡績工場で働き、教師になりたいという夢を諦めました。 その後、公務員の夫と結婚。長女、次女(ジヨン)に恵まれますが、次に妊娠した子が女の子だとわかり、男子を望む夫や義母の意向を汲んで堕胎します。そして、ようやく長男を授かり、嫁としての務めを果たしたとほっとするのです。 義母と同居して3人の子供を育てながら母親は、美容学校に通い技術を身につけたのち、お金のかかる国家資格は取らず、近所で訪問美容をはじめお金を稼ぎます。 IMFのときには公務員の夫を早期退職させ、割増の退職金でビルの一角の店舗を購入しチキン屋を開業、その後、お粥屋に切り替えて店を軌道に乗せます。商才と投資にたけ、たくましく家計を切り盛りした結果、広いマンションを手にするのです。父親は公務員時代の同僚より自分が恵まれていると知り「成功したのは半分は母さんのおかげだ」と喜びますが、母親は「半分とは呆れたわね、少なくとも7対3、私が7で、あなたが3でしょう」と言い放ちますが、まさにその通り。
きっと母親が進学していたら、飛び抜けて優秀で憧れの先生以上の存在になっていたに違いありません。しかし、現実は日本より男尊女卑で、なにかと長男優遇の歴史が脈々と流れる韓国ゆえ、ジヨンの時代になっても「就職できなければ家に居て嫁に行け」「なんとしても男子を産むべし」という考えがまだまだ根強いのです。 だからこそ、映画のなかで母親がここぞと娘を思ってキレるシーンにもう胸が痛い痛い…。演じるのはドラマ『彼女の私生活』のヒロインの母役など庶民的なキャラでお馴染みのキム・ミギョン。明るくたくましい一面と怒りを爆発させる落差が凄まじい!