COLUMN コラム

脱北女性のリアルを描く映画『ファイター、北からの挑戦者』が公開!

公開日 2021/11/08 15:11

変更日 2024/06/20 20:02

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脱北者の女性が韓国でボクシングと出会い、生きる希望を得て成長していく姿を描いた本作。2021年ベルリン国際映画祭正式出品、第25回釜山国際映画祭主演女優賞&NETPAC賞W受賞した秀作をご紹介します。(ネタバレあり)

北朝鮮で取材を重ねる『アジアプレス』ジャーナリストの石丸次郎氏によると、北朝鮮を脱出する大半は女性だといいます。本作でも、ジナが12歳の時に母親が家族を食べさせるために決死の脱北を図ります。
「なぜなら北朝鮮男性は(まず潜伏する)中国で誰も歓迎しないからだ。働かせても当局に発覚すると罰金が科される。家事は何もできない。強盗に変身するかもしれない。居場所がないんだ」

「韓国入りを果たした脱北者は2020年末時点で累計33,000人に及ぶ。政治制度の経済のシステムも異なる世界から来た脱北者が韓国に定着できるよう、韓国政府が手厚い支援制度を設けている。まず「端医院」(北朝鮮離脱住民定着支援事務所)で約3ヶ月の基礎的な適応訓練を受けた後、安価な公共賃貸住宅の提供を受ける。運転免許等の資格習得支援、就労支援もある。だが、北朝鮮で得た技術や資格、学位は韓国ではそのまま通用しないため、単純、低賃金労働につく人が多い。韓国に来たのに二級市民扱いされていると屈辱や挫折を味わう人が少なくない」

本作では、脱北後をリアルに描き、韓国での偏見と差別、先に脱北した母親との確執もストーリーに見事に組み込まれているのです。

◇ユン・ジェホ監督自身の体験も絡んだテーマ

本作の監督ユン・ジェホは、カンヌ国際映画祭に出品された脱北をテーマにしたドキュメンタリー『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』で世界に衝撃を与え、その経験を基に本作を作り上げました。

タイトルの「ファイター(Fighter)」は、文字通りの意味で、ジナの波乱万丈の 人生と、あきらめないことから生まれる尊厳を表現したといいます。


「北朝鮮の脱北者の多くは、言葉が同じなのでほとんどが韓国にやって来ます。彼らは韓国を “エルドラド “だと思う一方で、現実は決してバラ色でないことも知っている。それを知った上で、まだ希望を持っているのです。その希望を実現するための戦いの場が、韓国なのです。

人はだれでも夢や目標を持ち、それを実現したいと願っている。しかし、その希望が打ち砕かれたときに感じる絶望は、何よりも巨大で、切 実で、暗いものです。残念ながら、私たちは再び立ち上がって、もう一度戦わなければなりません。でもたった一人で闘うのは大変なことです。勇気が出ない。結局、些細なことであろうと、人に助けてもらう ことが必要なのです。

私も釜山を離れてフランスという異国の地で生活したとき、自分の希 望を現実にするために闘いました。韓国に帰ってもまだ終わっていま せん。ジナのセリフのように、私も何度も負けて、何度も立ち上がって きました。そうやって世界や自分自身と闘い続けていると、あきらめるよりも 、あきらめないという気持ちが強くなります」

と自身の体験を絡めたテーマで本作を描いたのです。

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