COLUMN コラム

韓国映画『三姉妹』は女優賞を総ナメにした痛みと滑稽さの変化球!

公開日 2022/05/29 22:00

変更日 2024/06/20 20:02

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青龍映画賞など名だたる韓国映画賞で最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞に輝いた『三姉妹』(6月17日公開)をご紹介します。

とりわけ三姉妹のなかで注目したいのはキム・ソニョンです。もともと舞台で活躍していた彼女は芸歴20年を超えるベテランで、ドラマや映画でもバイプレイヤーとして個性を発揮。人気作『恋のスケッチ〜応答せよ19880〜』(15)ではではソヌ(コ・ギョンピョ)とジンジュ(キム・ソル)を育てるシングルマザー役を好演。

ラブコメ『彼女の私生活』(19)ではキューレターのヒロイン(パク・ミニョン)が在籍する美術館の館長役。財力のある夫の力を使ってわがままやりたい放題!ヒロインにビンタすることもある憎まれ役でしたが、アート系の仕事に合わせた斬新なファッションを着こなし、『愛の不時着』(20)の北朝鮮のお堅い人民班長と同じ人物と思えないほど突き抜けていました。
 
さらに、本作ではモラハラの元夫にお金をせびられ、ミュージシャンの彼氏を追いかけるパンクな娘に手を焼きながら、怒りを表に出さない。辛い過去と病いを抱えているのに、いつもすまなそうにしている次女を演じており、その振り幅の広さに目を見張ります。

ちなみに、監督イ・スンウォンとは夫婦で子供は娘がひとり。長年、ふたりで映画や演劇の活動を続け、本作では複雑な役柄に挑み、内助の功を発揮。見事、青龍映画賞最優秀助演女優賞、百想芸術大賞最優秀助演女優賞を受賞したほか4冠に輝きました。

◇宗教と家庭内暴力、韓国社会の闇に迫るテーマ

少しネタバレになりますが、宗教とドメステック・バイオレンスが本作に深く関わっているのです。
韓国はキリスト教信者の多い国。俳優やアイドルの日常にもお祈りや教会が根付いています。

次女ミヨンは、熱心な信者で家族で囲む夕食を食べる前にも神への感謝を欠かしません。しかし、幼い長女がお祈りができないと烈火のごとく叱りつけます。

母親の宗教への盲信を押し付けられる幼い子供。親は子供のためになるよい躾けだと思っていますが、子供にまだ判断能力がないだけに、「虐待」の可能性もあり、実は非常に難しい問題だと思われます。

後半のストーリーで誕生会の席に牧師が出席していたことで、実は父親も熱心な信者だったことがわかりますが、それが姉妹たちの深いトラウマで本作のテーマにもなっているのです。

 主演とプロデューサーを兼ねたムン・ソリが「娘たちの世代が、暴力や嫌悪の時代を越えて明るく堂々と笑いながら生きていける社会になるように」との祈りを込めた本作は、新時代の異色の姉妹ストーリーといえます。

「三姉妹」
6月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
コピーライト:(c)2020 Studio Up. All rights reserved.
配給:ザジフィルムズ


監督・脚本 イ・スンウォン (長編第三作 )
製作: キム・サンス 、 ムン・ソリ
音楽 パク・キホン(『大統領の理髪師』)
出演:ムン・ソリ(『オアシス』、『ペパーミント・キャンディー 』、『お嬢さん』)、
キム・ソニョン(「愛の不時着」、『マルモイ ことばあつめ』)、チャン・ユンジュ(『ベテラン』)、チョ・ハンチョル(「海街チャチャチャ」「ヴィンチェンツォ」)

2020年 /韓国 /韓国語 /2.00:1/カラー (一部モノクロ)/5.1ch/115分 /原題:세자매/字幕翻訳:中西美絵
配給:ザジフィルムズ


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