赤ちゃんを売る旅からそれぞれの切ない人生と希望が見えてくる韓国映画『ベイビー・ブローカー』

レビュー

公開日 2022/06/09 15:00

変更日 2024/08/29 10:43

『万引き家族』（18）でカンヌを制した是枝裕和監督が韓国俳優と強力タッグ。本作でソン・ガンホが見事、第75回カンヌ映画祭で韓国人初の主演男優賞を受賞、また作品自体も「エキュメニカル審査員賞」受賞を果たした『ベイビー・ブローカー』（6月24日公開）をご紹介します。

なんとか人生をやり直したいとドンスと組んでベイビー・ブローカーをやっているのですが、連れ去った赤ちゃんの母親ソヨンに出会い、いい条件の養父母を一緒に探しまわるうち、しだいに赤ちゃんの幸せを願うようになるのです….。

　ガンホはサンヒョンのやるせなさやちょっととぼけたところをさすがの演技力で表現しており、本作の世界観を体現していました。

◇IUから女優としてひと皮むけたイ・ジウン

　国民の妹と呼ばれ愛されてきた人気アーティストのIU（アイユー）は女優のときは本名イ・ジウンを名乗っています。あのBTSのジョングクが“憧れの女性”と告白したことでも注目を集め、「グッチ」のアンバサダーとしても活躍中ですが、もう29歳とはちょっと驚き！

本作に起用されたのは、是枝監督が彼女の主演ドラマ『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」（18）を観て、その演技にホレ込んで出演をオファーしたそう。

このドラマでは、多額の借金を抱える契約社員役。唯一の身内である身体が不自由な祖母を世話しているのですが、そんな役柄が彼女自身の生い立ちと重なります。両親が保証人になり多額の借金を抱えてしまい子供時代は家族と離れ祖母の家で生活していたそう。その後の練習生時代の住まいや生活のほうが当時よりマシだったとテレビ番組で話していましたが、まるで韓国ドラマのストーリーを地でいくような貧しい暮らしだったようです。

『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」ではそれまでのお嬢様的なキャラクターから一転、内向的で生活に疲れた役にチャレンジし高評価を得ました。