公開日 2024/09/13 20:00
変更日 2024/09/13 20:00
SINGAPORE - MAY 27: Japanese actor Kento Yamazaki speaks during the press conference for 'Kingdom' Singapore premiere at the Sands Theatre, The Shoppes at Marina Bay Sands on May 27, 2019 in Singapore. (Photo by Suhaimi Abdullah/Getty Images)
9月7日に山﨑賢人が30歳になった。2010年のデビューから15周年の節目でもあるタイミングにとても相応しく鮮やかに写るのが、この旅番組『山﨑賢人×JEONGHAN 奇跡旅in韓国』だ。旅の相手は日本でも熱烈な人気を誇るSEVENTEENの最年長メンバーJEONGHAN。賢人ワード頻出の本番組について、“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。
初めて韓国を訪れたという山﨑賢人が、友人であるSEVENTEENのJEONGHANとソウルのサムチョンドンで約3ヶ月ぶりに再会する。フレンドリーに軽い挨拶を交わすその声は少しだけガラガラしているように聞こえるが、身体の底から響く深い低音の美しさがある。山﨑賢人の魅力を語りだしたら、100も200も芋ずる式で列挙できるだろうけど、ここでの山﨑はひとまず声の魅力を際立たせることに集中しているかのようだ。
その声に導かれるだけでもこの旅番組は十分楽しめてしまう。ただし気の置けない仲の友人を前にしているのだから、映画作品のような流暢な台詞回しをひと息に感じられるとかではなく、第1話冒頭で山﨑が「韓国旅行でJEONGHANに会いに遊びに来た感覚」と言うようにあくまでリラックスして、素に近い山﨑の声を堪能することになる。全編の雰囲気も何か特別なことをしようと気負うわけでもなく、ただ何となく2人でお喋りする心地よさがある。
日韓の大スターが完全に気を許し合ってソウル市内をぶらぶら歩きながら、まず立ち寄ってみるのがLOW ROOFというカフェ。外気の暑さに対して一時涼を取るためのブレイクタイムだ。夏でもホットコーヒーを飲むという山﨑に対して、JEONGHANは逆に冬でもアイスなんだと応じる。こういうやり取りが基本的に延々繰り返され、それがびっくりするくらいずっと見ていていられるんだから不思議である。2人はアイスのアメリカーノを注文して、せっかくだからといって涼みにきたはずが結局、外のテラス席を選ぶ。
一応日陰の席に座った2人は、上着を脱いでふうっとひと息つく。アイスアメリカーノをストローですすった山﨑が、「うめっ」と呟くと、JEONGHANは日本語の「梅」かなんかと勘違いしたのかな、それはどういう意味かと日本語で尋ねる。こんな短い音の日本語に興味を持って会話を広げる面白い人なんだな、JEONGHANという人は。「うめっ」は「うまい」と同義だよと優しげに山﨑は説明し、JEONGHANは(ヤギではなく)牛の鳴き声みたいだと笑う。でもこの着眼はかなり鋭い。なにせ山﨑賢人は、食べ物や飲み物に対するコメントの短さにおいてあまりに清々しい人だからだ。
確かあれは『トドメの接吻』(日本テレビ系、2018年)の放送のときだったかな。撮影の合間に番宣でバラエティー番組に出演した山﨑が、撮影衣装を着て食レポするみたいな感じだったと思う。もちろん食レポにはならない。撮影のことを一時の間忘れて、ひたすら目の前のご馳走をがつがつ食べ、「うめっ」か「うまっ」を連呼する。なのに食レポが成立してしまう。よく耳を澄ませて聞いてると、「うまっ」と「んまっ」で微妙に偏差があったりする。
ぼくとしては、主演映画『ゴールデンカムイ』(2024年)はまさに山﨑によるこの「うまっ」と「んまっ」の偏差を識別するための作品だった気がする。山﨑演じる杉元佐一がアイヌ料理に舌鼓を打つ場面がいくつかあるのだが、そこでもやっぱり「うまっ」か「んまっ」の瞬発的な音が聞こえてくる。旅番組だろうとバラエティー番組の食レポだろうと映画だろうと、どんなメディアでもここまで一貫した短音を発する魅力に満ちた俳優は、おそらく山﨑賢人しかいないと思う。