公開日 2023/01/12 19:30
変更日 2024/06/20 17:47
SEOUL, SOUTH KOREA - JUNE 21: Jeong Eun-chae, Suzy, Kim Joon-Han, Park Ye-young during a press conference of drama 'ANNA' at Conrad Seoul Grand Ballroom on June 21 2022 in Seoul, South Korea. (Photo by The Chosunilbo JNS/Imazins via Getty Images)
Amazonプライムビデオで配信されているぺ・スジ主演の韓国ドラマ『アンナ ディレクターズカット版(以下、D版)』のキャストやあらすじをご紹介!全6話クーパン版と全8話ディレクターズカット版の違いやストーリーをネタバレなしで考察します。【2023/03/07更新】
アンナのモデルとは?(イメージ)
夕焼けの浜辺を歩く女性
ドラマの内容とは関係ありませんが、実は主人公アンナのモデルとなった人物がいます。シン・ジョンアという女性が学歴を詐称し横領までしていた、韓国で実際に起きた巨大スキャンダルです。
彼女は、カンザス大学に浪人を経て入学しますが、英語力不足で卒業できませんでした。そして、「美術館に主席キュレーターとして就職し、大学の美術史助教授と主任学芸員になるため、32歳でイェール大学の美術史博士号を取得した」と嘘をついていました。その後さらに横領まで発覚し、35歳で18ヶ月の禁固刑が下りました。
事件後、学歴詐称が社会問題になり、芸能界にも調査が入って多くの著名人が摘発される事態になりました。2011年に放送された韓国ドラマ『ミス・リプリー』はホテルが舞台となっていますが、この事件を基にして描かれた作品です。
6歳のユミがイギリス人夫婦に預けられピアノで弾いていた『きらきら星』が、大人になってからも随所で流れているのが印象的です。裕福なイギリス人夫婦は、ユミの家族を見下しており、英語で悪口を言っている光景をユミが目撃してしまいます。これが、今後のユミの高いプライドと嘘まみれの人生を生むすべての発端といえるでしょう。
そのため、大人になった彼女が本来の“ユミ”に戻る瞬間で、まだ純粋だった幼い頃の『きらきら星』が流れるわけです。“アンナ”としての人生を真実だと思い込みながらも、どこかで後悔し、嘘一つない“ユミ”に戻りたい自分がいるということですね。
愛する人と結ばれない魅力的な女性
ギフトボックスを持つ女性の後ろ姿
一方、“アンナ”のパートで印象的に流れているのは、バレエ曲『エスメラルダ』です。この曲は、3人の男に愛されながらも自分の愛する男とは結ばれなかった主人公エスメラルダの悲劇を表現しています。この真実の愛を手に入れられなかった“イイ女”エスメラルダと、完璧な女アンナでありながら夫とは真実の愛で結ばれていないユミの悲しい人生が重なります。
ちなみに全6話のクーパン版では、『きらきら星』が一切流れません。
ドラマ冒頭からユミの幼少期・学生時代と物語が進み、ユミの波乱万丈な生き様が描かれる本作。彼女と深く関わる周辺人物にも、実は苦労した過去がそれぞれにあります。第5話ではアンナ(イ・ヒョンジュ)の学生時代、第6話ではハン・ジウォンの高校時代、そして第7話では夫チョ・ジフンの除隊後に問題を抱える両親や野心家になった理由が短いシーンながら各話の冒頭で描かれています。
この描写により、確かにユミは経歴を偽って“アンナ”になったとはいえ、現在の人生は果たして偽物と言えるのか、過去の出来事が今の自分を作り上げており、これもまた本物の人生といえるのではないだろうか、という疑問を視聴者に投げかけます。
物語後半でパク・スヨン演じるチョ・ユミが登場します。チェ・ジフンに秘書として雇われた彼女は、ユミと同じ名前を持ち、アンナに雇われた頃のユミと境遇も重なります。チョ・ユミの存在により、ユミが正気を保ち、偽りの“アンナ”人生から嘘のない“ユミ”に戻ろうとする彼女の闘いが幕を開けます。
韓国の受験生が抱えるプレッシャー(イメージ)
学校・塾でストレス・プレッシャーで落ち込む高校生・中学生(悩む)
韓国では学歴差別が社会問題となっており、受験シーズンになるとパトカーやバイク便で試験会場に向かう受験生たちの姿がよく報道されます。多くの韓国ドラマでも、こうした問題をきっかけに登場人物の物語が展開されるケースや厳しい受験を題材にした作品は少なくありません。
本作は、主人公を含む登場人物たちの完璧に見える優雅な人生には、過去のつらい経験から「見下されたくない」というプライドから築き上げられた人生を描いています。これも、言い換えれば“差別を避けるために学歴を詐称し偽物の人生を歩む主人公”を描いた作品であり、韓国の実際にある社会問題が根本的なテーマとして隠されています。
監督に謝罪した配信会社クーパンは、「全6話も好評だったのに」と騒動後も不満を漏らしていたようで、この騒動にもドラマのような配信会社側の醜い“プライド”が垣間見えていました。全8話の『アンナ ディレクターズカット版』は、主人公ユミや彼女の周辺人物たちの過去から生じたプライドにより出来上がった今の人生が本物なのか偽物なのか、本当の自分は何なのか深く考えさせられる作品です。