公開日 2021/11/04 12:09
変更日 2024/06/20 20:02
第34回東京国際映画祭のトークシリーズ「アジア交流ラウンジ」で11月1日に東京ミッドタウン日比谷で行われた是枝裕和監督(59)と台湾俳優チャン・チェン(45)のリモート対談をレポートします。
ホウ・シャオシェン監督の現場は「それまでの経験をゼロに戻して再構築するという仕事だった」とか。
「『百年恋歌』(05)の現場では、脚本もなく、A4サイズの紙1枚のあらすじを理解して撮影しました。また、監督はあまり照明を使わず、カメラをどこに置いているかも、いつ撮り始めたかもわからない。撮り直しがあってもなぜ前のテイクがダメなのか教えてもらえないので、これまでの自分のやり方や固定観念を破ってくれた経験でした」
逆にチャン・チェンから演出法を聞かれた是枝監督は
「僕は役者に合わせるタイプです。役者がどういうアプローチの仕方を好むか、どちらの方がよい演技を引き出せるかを観察します。たくさん情報を与えた方が良い人には出来るだけ与えますし、現場で一緒に探しましょうということを受け入れてくれる人には、そういう選択を取ります。意外と僕は型がないので、合わせますよ」と笑顔で答えた。
(C)2021 TIFF
CANNES, FRANCE – MAY 08: Jury member Chang Chen arrives at the jury photocall during the 71st annual Cannes Film Festival at on May 8, 2018 in Cannes, France. (Photo by Claudio Lavenia/GC Images)
最後に是枝監督は台湾映画界を担う存在のひとりであるチャン・チェンに今後の映画の未来像を尋ねました。
「観客の好みは変化しているので、それに合わせたいろんなエレメントが入っている作品を作るのは重要です。そして様々な世代が映画を通して繋がり、心の希望になるような作品を作りたい。監督など作る人も、見る人も、映画で人生が変わるような経験をしたことがあるのではないかと思います。ネット配信など映画の見方が変わっていく中で、映画という小箱の中につまっているものは変わらないと信じています。映画の仕事はハイレベルであり、精神的な満足感を得て、取り組んでいけるもの。自分自身が映画の仕事を続けていくことを光栄に思い、自信と希望を持ち続けていきたいです」