COLUMN コラム

11年ぶりの台湾ドラマ出演から名バディ共演作まで“豊穣”な連想で読み解くディーン・フジオカ作品

公開日 2024/07/29 20:00

変更日 2024/08/09 11:22

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ディーン・フジオカが出演する作品間を自由に連想し、語ることには大きな喜びがある。11年ぶりに出演した台湾ドラマ『次の被害者 Season2』(Netflixで6月21日から配信)が配信されたかと思えば、8月23日(金)からは出演最新作の映画『ラストマイル』が全国で公開される。過去と現在(未来)をつなぎながら、新作公開の都度、“豊穣”な読み解きが可能なディーン作品について、コラムニスト・加賀谷健が自由な連想で解説する。

11年ぶりの台湾ドラマ出演

 そうした自由な連想によって言語化可能なのが、ディーン・フジオカ作品なのだが、彼がキャリアのルーツとする台湾時代の作品からも未だに源泉がボコボコわいている。Netflixで配信されている台湾ドラマ『次の被害者 Season2』は、実に11年ぶりの台湾ドラマ出演作。つまり、台湾の国民的ドラマ『王子様をオトせ!』(2013年)以来となるが、ワイルドな髭スタイルのクリエイティブ・ディレクター、ディーン・カミヤを演じた同作初登場場面を起点とする連想がここで。

 第7話、ディーン・カミヤは、靴音をならしてオフィス内にやって来る。これって山下智久主演ドラマ『正直不動産2』(NHK総合、2024年)でディーンが演じた恐るべき不動産営業マン・神木涼真の初登場場面で軽快にステップを踏む靴音との通奏低音じゃないかとぼくは勝手に思っている。11年前の台湾時代から朝ドラ『あさが来た』(NHK総合、2015年)に五代友厚役で出演以降、急速に頭角を現す日本作品へとつながり、現在でも作品間で類似する通奏低音。その響きは現在でももちろん有効だ。

『次の被害者 Season2』でディーン扮する検察官・チャン・ゲェンハウは、エピソード1冒頭から初登場。まず後頭部が2カット写る。次に3カット目で正面から捉えられる。口元の周りを輪郭づけるのは、髭。11年ぶりの台湾ドラマ出演は、口髭マナーとでも言うべきビジュアルの共通項から始めなければならなかった。だからわざわざ後頭部から写して、謎めいた雰囲気を醸した上で、口髭の正面を印象づけた。『王子様をオトせ!』では、アーロン扮する主人公への第一声が「久しぶり」と日本語だったが、『次の被害者 Season2』の再捜査会議でのチャンは、全編中国語を話す。日本の視聴者にとっては、『パリピ孔明』(フジテレビ、2023年)の劉備役で披露した中国語が記憶に新しい。同作で歴史上の偉人を演じたディーンだからこそ、『次の被害者 Season2』出演発表時のコメントでは、「台湾で昔の仲間達と再会し、中国語の台本を開き、現場で撮影クルーと過ごす日々のなかで、自然と俳優人生の初心を思い出し、「過去の自分」から「未来の自分」に対するメッセージを受け取ることができました」と台湾ドラマ出演時代から積み重ねてきた自分史のコンテクストをすり合わせながら、俳優人生を豊かに上書きする。

 そう考えると、ディーン・フジオカ自身が、歴史上の人物のような気がしてくる。出演最新作は常に過去作の上に成り立ち、過去を参照することで現在の本質的部分に迫り、未来の自分を捉え直す。出演歴自体が、謎解きであり、そのために連想や妄想による類似が強力なツールになる。探究心と一言に集約してもいい。探究心のかたまりみたいな名探偵であり、現代のシャーロック・ホームズ、誉獅子雄を演じ、岩田剛典との名バディを固く結んだ共演作『シャーロック』(フジテレビ、2019年)の劇場版『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(2022年)の配信が、Netflixで7月18日から開始され、SNS上では「ネトフリもバスカで盛り上がってきたな」というハッシュタグがついていたり(そう言えば、『シャーロック』第9話のレストランでのディナー場面では、「ちょうどいい熟成具合」と評した赤ワインを獅子雄がテイスティングしていたのを思い出した)。8月23日(金)からは、出演最新作の映画『ラストマイル』が全国で公開される。台湾から日本へ、日本から台湾へ、そしてまた日本へと豊穣で芳醇な連想のディーン・フジオカ研究は続く。

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加賀谷健