公開日 2024/12/26 18:00
変更日 2024/12/26 18:00
PARIS, FRANCE - JUNE 22: Wang Yibo attends the Loewe Menswear Spring/Summer 2025 show as part of Paris Fashion Week on June 22, 2024 in Paris, France. (Photo by Jacopo Raule/Getty Images)
いよいよ今年も残すところあとわずかとなりました。2024年の中国映画やドラマ、バラエティー番組の中国現地でのヒット作やトレンドなどの傾向について、振り返っていければと思います。 一緒に大きなトレンドを掴んで、来年も中国エンタメを楽しんでいきましょう!
世界一の映画市場である北米と同規模まで成長したことが、ここ数年話題となっている中国の映画市場ですが、今年は11月末時点で興行収入が前年同期比79%と、昨年よりも市場規模は縮小見込みと中国メディアでは報じられています(※1)。
中国では例年、長期休暇にあわせて大きく4つのシーズンで映画が公開されます。元旦時期(1月)、春節時期(2月)、夏休み時期(6-8月)、中秋・国慶節時期(9-10月)の4つです。
今年は春節時期に、日本の映画『百円の恋』をリメイクした作品『熱辣滚燙』(邦題:YOLO 百元の恋)が大ヒット。世界累計興行収入約740億円、劇場での視聴人数約7,200万人と、中国全土で大きな話題となりました。しかしその後は夏休み時期に『抓娃娃(じゅあわわ)』などのスマッシュヒットは生まれたものの、特に秋以降の時期にヒット作に恵まれなかったことが、振るわない要因になっているようです。
不調な理由は様々な分析がされていて、SNSで“無料”で見られるショートドラマ作品が増えたことや、若者にとって映画館に行くことが1つのカルチャーではなくなってしまった… などが挙げられています。また個人的には今年は特にSNS上で映画の放映前から、作品の内容と直接関係ないようなネガティブな指摘・評価がネットで広がるなど、意図的なアンチ書き込み合戦のような現象が映画界にも広がっているように感じました。
また、社会として多様化が進んだことで、1つの作品に熱狂・共感できるような現象が起きづらくなっているとの指摘も。確かに今年1位となった、『熱辣滚燙』(邦題:YOLO 百元の恋)はストーリー以上に、主演女優のジャー・リン(賈玲)さんが映画のために、9カ月かけて50 kg以上の壮絶なダイエットを行ったことが話題になっていた印象です。ダイエットは万国共通の関心事ですね。
今年のランキング暫定第3位の『抓娃娃(じゅあわわ)』は、1代で富を築いた大富豪の社長が、息子が裕福な環境で育つことに危機感を感じ、郊外の貧しい家を借り、近所の住人から祖母役まで、有名教師陣を雇い演じさせ、苦労をさせながら跡取りとしての素養を育てるというストーリー。
これもまた、教育熱が過熱する中国ならではの視点の映画で、やりすぎ?と思う部分も個人的にはありましたが(笑)、家族みんなで笑って楽しめるヒューマン映画でした。
『熱辣滚燙』(邦題:YOLO 百元の恋)は、日本でも2025年1月8日(水)にDVDが発売予定で、『抓娃娃(じゅあわわ)』は2025年1月上旬ごろまで全国のいくつかの映画館で放映中です。上映情報は公式サイト等をチェックしてみてください。
中国映画も日本での配信がもっと増加するといいなと思います。
(※1)2023年の中国映画年間興行収入は日本の約5倍の549億元(約1.1兆円)。2023年は11月末時点で508億元(約1兆円)なのに対し、今年は405億元(約8,505億円)という進捗。出典:灯塔専業版
中国エンタメを追っていると、年に何度か映画賞の話題を目にされることも多いかと思います。中国では主に、隔年で開催される「華表賞」と「百花賞」、1年に1度開催される「金鶏賞」と、3つの映画賞があり、それぞれ選出機関が異なることから、受賞の意味合いも異なります。
2023年は日本でも上映され、ワン・イーボー(王一博)さんが出演され大きな話題となった『無名』からトニー・レオン(梁朝偉)さんが「金鶏賞」の〈最優秀主演男優賞〉を受賞。今年「百花賞」には、日本でも人気の高いチュー・イーロン(朱一龍)さんが『人生大事』で見事〈最優秀主演男優賞〉に輝きました。
一方ドラマは、放映ドラマ数自体は減少しているものの、累計再生回数は35%増加しており(※2)、好調な様子です。ここ数年各動画配信プラットフォームは、“减量提质、降本增效 (ドラマの数を減らす分、質を高め、コストを削減しながら効率を高める)”という方針を推し進めており、その成果かもしれません。
ランキングを見ると、ここ数年の傾向と同じく、10作品中6作品が時代劇ドラマで占められており、時代劇ドラマの人気が根強いことが分かります。ただストレートなラブロマンス物は減少しており、舞台は時代劇ながらミステリーの要素を加えたり、人間ドラマに重きを置かれていたりと様々な掛け算がなされている印象です。
5位の『惜花芷』(邦題:惜花芷~星が照らす道~)も多くの中国女性たちの心を掴みランクインしました!
『惜花芷』(邦題:惜花芷~星が照らす道~)は、来年2025年2月3日(月)から日本でも順次デジタル配信を予定しているようです。
ランキング1位の『墨雨雲間』は、『瓔珞(エイラク)~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~』のウー・ジンイェン(呉謹言)さん演じる強く芯の通った勇敢な女性主人公が、自身を陥れた敵に対し復讐する過程を描いたストーリー。 “ショートドラマ形式のドラマ”とも評価されており、テンポのよい復讐劇が爽快と夢中になる人が多数とか。
その他のジャンルで見ると、7位にランクインした『繁花』は、80年代後半から90年代の上海を舞台に、貧しかった青年が株券の購入をきっかけに経済成長の波にのって金融界で成り上がっていく様子を描いたドラマで、ロケ地である上海の街並みで聖地巡礼が流行するなど社会現象を巻き起こしました。
9位の『追風者~金融界の夜明けへ~』は、民国時代を舞台にした作品。ワン・イーボー(王一博)さん主演で、中国のみならず公開直後から日本含むアジアで配信がスタートし、大きな話題になりました。
『繁花』はまだ日本放送の情報は出ていませんが、『追風者~金融界の夜明けへ~』は動画配信サービス「みるアジア」でも視聴可能です!
上記のランキングはネット上の再生回数をベースにしたものですが、ここにテレビ放送での視聴数を足すと、2024年NO.1ヒット作になると言われているのが『慶余年シーズン2』です。
現代の記憶を持った主人公が乱世の時代に転生をし、様々な困難に直面しながらもその時代の重要人物として成り上がっていく… という時代劇×ミステリー作品です。
私もシーズン1からのファンで、リアルタイムでドラマを追いかけました…!
中国現地では、「シーズン1と比べるとミステリーの仕掛けがあまい!」や「ちょっと主人公ひいきすぎる」など厳しい意見が多かったようですが、私個人的にはシーズン1同様、ハラハラドキドキする展開やユーモアも散りばめられていて、大満足で完走しました!観ていてスカッとするようなセリフ回しや痛快などんでん返しなどのストーリー展開は、日本のドラマ『半沢直樹』(TBSテレビ)のようで、『半沢直樹』ファンの方はぜひ見てもらえればと…!
日本で放映開始時期はまだ発表されていないようですが、今から楽しみです。
またこの『慶余年シーズン2』はファンが5年以上続編を待ち望んだ話題作ということもあり、商業化にも力をいれていました。中国ドラマ特有の、出演者たちが登場してスポンサー企業の商品を紹介する劇中CM数で歴代NO.1、ドラマのトレーディングカード売上が20億円以上、更にはスポンサー企業がドラマ放映を祝い花火大会まで開催するなど、広告数・売上共に過去最大規模になったとのこと。(※3)
(※2)「壹娱觀察」2024年7月報道
(※3)「騰訊視頻」発表、ドラマ『慶余年シーズン2』戦報