公開日 2025/01/21 20:00
変更日 2025/01/21 20:00
SEOUL, SOUTH KOREA - JANUARY 05: V of BTS arrives at the photo call for the 34th Golden Disc Awards on January 05, 2020 in Seoul, South Korea. (Photo by THE FACT/Imazins via Getty Images)
BTS V にときめかなかったことなんてあるだろうか? 他のアーティスト曲に客演しようが、魅力的なソロ曲をドロップしようが、Vは常にぼくらをときめかせてくれる。イケメン研究をライフワークとするコラムニスト・加賀谷健が、2024年のVを振り返りながら、独自の視点で解説する。
BTS Vが新しい楽曲をドロップするときの素直な嬉しさ、期待感は、他のアーティストではちょっと味わえない贅沢な感覚がある。リリース日が近づいて、期待値がどんどん高まっても、裏切られるということがまずない。というかむしろ、ぼくらの期待などというちっぽけな範疇にはおさまりがたく、楽曲そのものの魅力がいつでも豊かに、まろやかに広がる。ドロップ以前以後、常にときめかせてくれる存在。それがVというアーティストである。
また他では味わえない余韻も醸成してくれる。2025年も新年を迎えてそれなりに時間が経つというのに、Vが2024年にドロップしてくれた楽曲たちが、未だにあざやかな印象をもってリスナーの感性を刺激してくれるからである。2024年のドロップ楽曲群を振り返るためには、2023年12月30日まで遡る必要がある。Vのバースデーにリリースされたのが、UMIの「wherever u r(feat.V of BTS)」だった。ネオ・ソウルの伝道師エリック・ベネイに対するリスペクトを表明するVが、次世代ネオソウルのアーティストであるUMIの楽曲に客演するだけで、贅沢過ぎる。
1番はUMIパート、2番から自分のパートをしっとり丁寧に歌い込むVがもたらす余韻。この客演ナンバーからすぐ年が明けて2024年1月24日に先行リリースされた韓国の国民的歌い手IUの「Love wins all」では、ミュージックビデオに参加している。ドの単音を同音連打するピアノのイントロが特徴的なこの楽曲でVは歌わなかった。客演でもなく、デュエットでもない。『コンクリート・ユートピア』(2024年)のオム・テファ監督が演出を手掛けたミュージック上の被写体としてIUと画面を共有しただけなのである。にもかかわらず、ハンディカムを構えたVの横顔にはハッとさせられる。歌わない選択肢すらVは魅力的に自ら演出してしまうのである。
2023年の年末に客演、2024年最初の月にも被写体として余韻を感じさせたVは、2024年3月15日には自身のソロ名義で「FRI(END)S」をドロップ。客演でも余念がないVは、自分のソロ曲になるとより明確に打ちだす世界観があると言いたげである。「FRI(END)S」ミュージックビデオは、寝起きのVが歯を磨き、冷蔵庫から取りだしたテイクアウトボックスを食べる場面から始まる。歯を磨く音、朝食を食べるわずかな咀嚼音。これらVから発せられる音も楽曲を構成する魅力的な音要素になっている。
室内から屋外へ。バスが横切る。ポップでビビッドな画面を満たすようにイントロがかかる。その瞬間のときめき。これこそVの新曲に対する期待とそれをはるかに上回るサウンドの粒だちである。ミュージックビデオのビジュアル、画面スタイルとしてのルック、音作り、どこをどう考えてもVオリジナルのVからしか響いてこないクリエイティブな表現性である。
ビート感もいい。どれだけループしていても飽きない。それどころか、心地よいビートとその繰り返しにずっと身を委ねていたい。何度も聴いているうちに、Vがフェイバリットソングのひとつに挙げている「Best Part(feat.H.E.R.)」のダニエル・シーザーが客演しているジャスティン・ビーバーの「Peaches ft.Daniel Caesar,Giveon」とこの「FRI(END)S」が、どこかしら愉快な兄弟曲なんじゃないかと思えたりする。客演から客演につながるVのループ世界がある気がする。
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修。 クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。 女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、 テレビドラマ脚本のプロットライターなど。2025年から、アジア映画の配給と宣伝プロデュースを手がけている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。