公開日 2025/02/16 12:00
変更日 2025/02/16 12:00
INGLEWOOD, CALIFORNIA - DECEMBER 06: (EDITORIAL USE ONLY. NO COMMERCIAL USE.) Jin of BTS attends 102.7 KIIS FM's Jingle Ball 2019 Presented by Capital One at the Forum on December 6, 2019 in Los Angeles, California. (Photo by Jeff Kravitz/FilmMagic for iHeartMedia)
仮にもしこの世界でたったひとりの人間になったとしても人類を楽しませようとする。それがBTS最年長メンバーJINの態度表明であり、魅力ではないかと思う。その意味で彼は“スーパー人類”である。イケメン研究をライフワークとするコラムニスト・加賀谷健が、JINのダイナミックなソロ表現から愛すべき理由を読み解く。
グクミンの愛称でしたしまれるBTS JIMINとJUNG KOOKが入隊前の思い出作りとして、ニューヨーク、済州島、札幌をめぐる旅番組『Are You Sure?!』(Disney +、2024年)第6話、北海道の雪道を走行中の車内でハンドルを握るにKOOKがこんなことを言う。「まともなメンバーはいない」。助手席に座JIMINが自分は唯一まともだと言い張る。そもそも上述発言のきっかけになったのは、BTS最年長メンバーJINである。
同番組では移動中に必ず音楽がかかる。JIMINが、自分のプレイリストから選曲したのが、JINの「Super Tuna」だった。トラックタイトルを直訳すれば、「超マグロ」。JINMINが「作ったことにあきれるよ」と言うように、よくわからないタイトルだが、でもそのよくわからなさみたいなものがJINの音楽世界に取り込まれると、これが実に愉快な魅力と独自性を放ち始めるのだから、不思議なものである。ワールドワイドハンサムと自らたわむれに自称するスーパースターJINワールドには、確かに「あきれる」。
「Super Tuna」ミュージックビデオを見たJIMINが、とにかく笑う。腹を抱えて笑う。 「Super Tuna」と力を込めるJINの発声、身体をスイングさせたエアー釣り、画面上でぴちゃぴちゃ躍動する合成の魚たち。どれもこれも可笑しな面白要素である。リアルな鮮魚を登場させるのではなく、あくまで嘘っぽい合成魚にこだわる。不意に画面上手からフレームインする合成魚は、例えば、低予算サメ映画を量産するアサイラム・スタジオ作品のチープでいてそれがかえって魅力的な世界観に通じる。歌詞に「サメ」というワードが出てくるが、JIMINは「サメはよくないだろ」とすかさずツッコミを入れている。ツッコミどころ満載。というかむしろツッコミ大歓迎。みんなで楽しもう(!)スタイルを掲げるJINのスーパー快調シーフード曲が、この「Super Tuna」なのである。
「Super Tuna」に限ったことではない。JINのソロ曲はどれもイントロから歌い出しを一聴してみただけで、リスナーの気分がぐんぐん前向きになる。スーパーポジティブなナンバーばかりだ。2024年11月25日にリリースした1stソロアルバム『Happy』に収録された「I’ll Be There」はその好例。ドラムスきっかけでご機嫌に歌い始めるJINの掛け声「Oh oh oh」のコールアンドレスポンスに身も心も全面的にノリたくなる。この曲に関しては、日本が世界に誇るスーパーグループ嵐のメンバー相葉雅紀のお墨付きでもある。
相葉がJINの招待を受け、韓国に赴く特別番組『あの頃からわたしたちは』(日本テレビ、2024年12月7日放送)冒頭、HYBE社屋への移動中車内で、JINが「I’ll Be There」を相葉に聴いてもらう場面がある。同番組収録日が同曲リリース日だと説明。相葉は「爽やかだしキャッチーだしポップだし」と評す。JINのソロ曲に対してこれ以上的確な評言が他にあるだろうか? どこまでも快調、どこまでもご機嫌。スーパースターらしいストレートでダイナミックなソロ表現。
その一方でJINは、世界の複雑さを自らの歌世界のテーマにすることもある。『Happy』タイトルトラック「Running Wild」。ミュージックビデオを見ると、明確なテーマ性が伝わってくる。舞台は飛来する隕石による地球滅亡の日。人々が避難する中、それでもあたふたすることなく、変わらず自分のペースでその日を思いきり楽しんでやろうとするJINがいる。相棒は犬。2024年6月に兵役を終えたJINが日本のテレビ番組に初めて出演したのが韓国の保護犬施設でロケを行った『相葉トリミングin韓国』(日本テレビ系)であり、保護犬のトリミングをライフワークとする相葉との初共演でもあった。
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修。 クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。 女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、 テレビドラマ脚本のプロットライターなど。2025年から、アジア映画の配給と宣伝プロデュースを手がけている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。