公開日 2024/12/26 12:00
変更日 2024/12/26 12:00
SEOUL, SOUTH KOREA - MAY 08: South Korean actor Song Kang-Ho attends the Disney+ 'Uncle Samsik' press conference on May 08, 2024 in Seoul, South Korea. (Photo by Han Myung-Gu/WireImage)
激動の時代を歩み、今もなお激動の時代に揺れる韓国。今回はそんな韓国の近現代史に真摯に向き合う韓国映画をピックアップ。胸が痛むような事件や理不尽な出来事。怒涛の歴史的事件に目を背けず描き切った作品たち。実話を基にした史実映画は、私たちの心を大きく揺さぶり、考える機会を与えてくれます。韓国をより深く知りたい人にもおすすめの映画とその背景にあった事件・出来事についてご紹介いたします。
韓国には「ファクション」という言葉があります。
実際の事件や歴史である「ファクト」に作品としてわかりやすく脚色した「フィクション」を足した言葉です。
昨今の韓国では、歴史的事件や出来事に脚色を加えた「ファクション映画」が増えてきました。
歴史的事実を身近に感じることで、「考える機会」を与えてくれるファクション映画。
そんなファクション映画を中心に、韓国の近現代史と民主化について学べる映画作品を時系列でご紹介していきます。
2019年に韓国で公開された映画『マルモイ ことばあつめ』は、1940年代の日本統治下の韓国が舞台。
朝鮮語の使用が規制されていた日本統治時代の朝鮮半島で実際に起きた朝鮮語学会事件を基に、朝鮮語の辞書を出版するために奮闘した人々の姿が描かれています。
主人公のリュ・ジョンファン(ユン・ゲサン)、キム・パンス(ユ・へジン)をはじめとする登場人物たちの母国語の辞書作りに奔走する姿は、母国への愛、母国への誇りがあふれていて胸が打たれます。
また、言葉や名前の尊さについても考えさせられる作品。
1940年代の日本統治下時代を描いた作品は、日本人としては複雑な感情になってしまうものですが、韓国という国がどんな歴史を経て今日に至るかを知る上で観ておきたい作品といえるでしょう。
ちなみにNetflixシリーズ『京城クリーチャー』も、この作品と同じ1940年代の日本統治下の韓国、京城が舞台となっています。
『マルモイ ことばあつめ』|kboardでユーザーレビューを読む
韓国映画の名作としても名高い『国際市場で逢いましょう』。今や韓国を代表する名俳優、ファン・ジョンミンの代表作としてもおなじみです。
2014年に公開されたこの作品は、韓国で観客動員数1,400万人を突破する大ヒット映画となりました。
激動の韓国・釜山を舞台。幼少期、朝鮮戦争による混乱の中、父と妹と離れ離れになってしまった主人公ドクス(ファン・ジョンミン)の波乱に満ちた生涯を描いたヒューマンドラマ。
家族を守るために、朝鮮戦争やベトナム戦争といった激動の時代を生き抜いた男の生涯を通して、1950年代から現代に至るまで、韓国がどのような歩みを経てきたのかも知ることができます。
そして、家族の絆、ドクスの「家族を守ろう」とする強い愛情と信念に号泣必至の感動作です。
『国際市場で逢いましょう』|kboardでユーザーレビューを読む
2004年に公開された映画『大統領の理髪師』は、1960年代から1970年代後期の韓国を舞台とした作品。
主人公は、美しい妻とかわいい息子に囲まれて幸せな日々を送る理髪師のソン・ハンモ(ソン・ガンホ)。平凡な男が、ある事件を機に大統領の専属理髪師に選ばれたことで、政争・政治の渦に巻き込まれていく様子を描いた作品です。
社会派映画としては珍しくコメディタッチで描かれつつも、軍事政権の重々しさ、恐ろしさも描かれています。
フィクションではありますが、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領時代の韓国を庶民目線で描いたことでも有名な作品。朴正煕、全斗煥(チョン・ドゥファン)をモデルにした人物も登場します。
1979年10月26日に起きた朴正煕大統領暗殺事件。その後の時代を大きく変えたといっても過言ではない、韓国の近代史において重要な出来事でもあります。
映画『KCIA 南山の部長たち』は、登場する人物は別名に置き換えられたフィクションではありますが、朴正煕大統領暗殺事件を基に描かれた政治スパイ映画。
大統領の側近でもある大韓民国中央情報部(KCIA)の部長が、なぜ大統領を殺したのか。大統領暗殺の裏にあった1970年代の韓国の闇、権力争いの怖さが描かれています。
イ・ビョンホン、イ・ソンミン、クァク・ドウォン、イ・ヒジュンと実力派俳優たちが勢揃いのキャストにも注目です!
『KCIA 南山の部長たち』|kboardでユーザーレビューを読む
2023年に公開された映画『ソウルの春』は、「粛軍クーデター」「12.12軍事反乱」などとも言われる韓国民主主義の存亡を揺るがした実際の事件を基に、一部フィクションを交えながら描かれた作品。
2023年の観客動員数第1位(韓国)を記録し、コロナ禍以降の劇場公開作品としてはNO.1となる歴代級のメガヒット映画となりました。
ファン・ジョンミンのほかに、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・へジュン、キム・ソンギュン、チョン・へインなど豪華な俳優陣が出演しています。
朴正煕大統領暗殺事件が発生したその後の韓国を描いた今作では、新たな独裁者として君臨しようとするチョン・ドゥグァン保安司令官(全斗煥がモデル)が主人公。
この作品で描かれた国家の命運を懸けた激しい攻防が繰り広げられたのは、今からたった40年程前。そう考えると、この数十年で韓国がいかに大きな変貌を成し遂げてきたか、その事実に驚きを隠せません。
ファン・ジョンミンの怪演も話題となった『ソウルの春』。
前述でご紹介した『KCIA 南山の部長たち』では、ソ・ヒョヌが全斗煥をモデルとした人物を演じています。この人物に注目して2作を観るのも面白いかもしれません。
朴正煕大統領暗殺事件から1年後、軍事クーデターによって軍及び政権の実権を掌握した全斗煥。
一方で、軍事政権に対し民主化を求める学生デモや労働争議は増加。そんな情勢の中で、光州での民主化要求デモを鎮圧するため陸軍部隊を送り、市民が多数虐殺された出来事が光州事件です。
そんな1980年の光州事件時の実話を基に描いた『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は、光州事件に巻き込まれた市民ではなく、記者とタクシー運転手が主人公。
民主運動にまつわる衝撃的な事実を世界に伝えた記者、そしてその記者を乗せたタクシー運転手というさまざまな立場の視点で光州事件について考えることができる作品となっています。
なお、主人公の1人であるドイツ人記者ピーターは、光州事件を撮影・報道したドイツ公共放送連盟(ARD)東京特派員、ユルゲン・ヒンツペーターという実在した人物をモデルとしています。
軍事政権と民主主義について考えさせられるだけではなく、事実を知らせるというジャーナリズムの大切さ、そして「正しいことを自分で選ぶ勇気」が描かれている名作です。
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光州事件から7年後、1987年1月14日の学生運動家朴鍾哲拷問致死事件から6月民主抗争に至る韓国の民主化闘争が描かれた作品が映画『1987、ある闘いの真実』です。
キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・へジン、ソル・ギョング、キム・テリ、カン・ドンウォン、ヨ・ジング…と豪華な俳優陣の熱演からも目が離せない今作は、1人の大学生の死から民主化のために立ち上がろうとする市民と巨大権力との闘いが描かれています。
徹底的なリサーチと時代考証により完全再現された1980年代後期の韓国を通して、民主主義の世の中で生きていることがどれだけ幸せなことか…と考えずにいられませんでした。
こちらも韓国を代表するヒット映画であり、近現代史を学ぶには欠かせないファクション映画です。
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1987、ある闘いの真実 | Hulu
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民主化と経済発展が急速に進む1990年代の韓国。一方で、北朝鮮の核兵器開発を巡って緊張状態が高まっていた朝鮮半島。
そんな時代背景の中、北朝鮮に潜入した工作員の実話を基に制作された衝撃の問題作が『工作 黒金星と呼ばれた男』です。
韓国と北朝鮮の裏取引により命の危険にさらされることとなった主人公パク・ソギョン(ファン・ジョンミン)の想像を絶する過酷な工作活動、南北の権力者たちの闘争が描かれています。
国を背負った駆け引きの中に垣間見える男たちの芯の強さ、真っ直ぐな信念に痺れる骨太な作品です。
工作 黒金星と呼ばれた男|U-NEXT
工作 黒金星と呼ばれた男 | Hulu
『工作 黒金星と呼ばれた男』|kboardでユーザーレビューを読む
2018年に公開された映画『国家が破産する日』は、1997年に韓国を襲った国家破産の危機(IMF経済危機)を、立場の異なる3人の視点から描いた社会派サスペンス。
国家、経営者、企業、市民すべてに影響を与えたIMF経済危機。さまざまな立場から見た韓国通貨危機の内情が描かれているので、1990年代前期の韓国がどのような厳しい時代だったのかもわかる映画といえるでしょう。
ちなみにドラマ『二十五、二十一』もIMF経済危機の時代を舞台に描かれた作品。ジャンルが異なる作品だからこそ、IMF経済危機が人々に与えた影響を多角的に考えることができるはず。
また、2025年に配信予定のキム・スヒョン主演Disney+ドラマ『ノックオフ』もIMF経済危機によって失業者となった青年が主人公。
複数の作品を通してIMF経済危機がどんなものだったか知り、考えることで、韓国の激動の近代史への理解がより深まるかもしれません。
最後にご紹介するのは、1991年のソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの生死をかけた脱出劇という実話を基に描いた映画『モガディシュ 脱出までの14日間』。
国連加盟を目指す韓国政府と北朝鮮。アフリカ諸国へのロビー活動に奔走しており、両国間の妨害工作や情報操作はエスカレート。そんな中、ソマリアでは政府に不満を持つ反乱軍による内戦が激化。
ソマリア内戦に巻き込まれた両国は、なんとか首都・モガディシュから脱出しようとします。
敵対する韓国と北朝鮮の大使館員たちが協力するまでの政治劇や感情の攻防、激しいカーアクションに圧倒される衝撃作。2021年度の大ヒット映画となり、第42回青龍映画賞で作品賞、監督賞、助演男優賞などを受賞しました。
韓国と北朝鮮の関係性、そして敵という関係性を越えて「人間として守りたいもの」について考えさせられる名作です。
モガディシュ 脱出までの14日間|U-NEXT
モガディシュ 脱出までの14日間 | Hulu
『モガディシュ 脱出までの14日間』|kboardでユーザーレビューを読む
モガディシュ 脱出までの14日間|公式サイト
先日の戒厳令宣布によって混乱の中にある韓国。こうした社会情勢もあってか、民主化や政権運動など韓国の歴史を振り返る社会派映画に注目が集まっています。
韓国の激動の歴史を知ることで、より韓国への理解が深まるはず。映画に描かれていることはすべてが事実ではありませんが、歴史に興味を持ち、理解を深めるきっかけになるはずです!
そして、韓国の社会を通して、日本の社会を考える1歩にもなるはず。
映画としても名作揃いなので、ぜひ今回ご紹介したファクション映画・社会派作品に注目してみてくださいね。
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