公開日 2025/01/20 18:00
変更日 2025/01/20 18:00
BEIJING, CHINA - JUNE 25: Actor Tan Jianci attends the Chinese Olympic Team Tokyo 2020 Uniform Unveiling at Yanxi Lake on June 25, 2021 in Beijing, China. The 2020 Tokyo Olympics has 33 major events, 50 sub-events, and 339 small events. It is the most gold medal-winning event in all previous Olympics. The number of athletes participating in the Chinese Olympic delegation has reached more than 300. (Photo by Lintao Zhang/Getty Images)
今月も先月に引き続き、2024年の中国エンタメ市場の傾向について振り返っていければと思います。今月はコロナ明けから本格復活を遂げた中国コンサート市場に注目! 中国国内ではコンサートやフェスが軒並み開催され大盛況な半面、「質が低い」とファンから不満の声があがったり、売れ行き不調が原因と思われる突然の公演キャンセルが散見するなど、飽和状態に突入しているのかなとも感じられる1年でした。 一方、中国のアーティストも新たな公演の場を求めてか日本での公演が急増し、日本でも中国のアーティストの生歌を聴く機会が増えるという個人的には嬉しい一年でもありました! それでは早速、一緒に振り返っていきましょう!
2024年の中国のコンサートチケットの興行収入は約4,100億円。コロナ渦からのリベンジ消費を取り込むことで完全復活したと言われた2023年のさらに83%増と、大幅な成長を遂げました。(※1)
特筆すべきはコロナ前の2019年と比較すると、2024年上半期の公演回数は6倍の約25万回、観客動員数は7倍の約1,192万人以上となっていることです。コロナ前以上に、コンサートに行くことが身近な娯楽の1つになっています。(※2)
日本との違いでいうと、中国の人は日本よりもコンサートに行くハードルが低いように個人的には感じます。例えばその歌手の曲を「1曲だけ知っている」や、「友人に誘われて」というように、所謂ガチなファンでなくても、映画館にいくような感覚で足を運ぶイメージです。
とはいえ中国のコンサートのチケット代は、決して安くはなく、人気のある歌手であれば安い席でも1~数万円前後しますし、アリーナのVIP席となると、5万円以上します。
ですので、ライト層が多いことから、比較的安い席から売れていき、一部のコアなファンが高い席を購入する…という流れでチケットが売れていきます。
(※1)出典:灯塔専業版
(※2)出典:道略音楽産業研究院
さらに2024年は、歌手にとどまらず、俳優として第一線で活躍するトップ俳優たちが続々とコンサートを開催し、大きな話題となりました。
日本でも『オオカミ君王<キング>とひつじ女王<クイーン>』や『霜花の姫~香蜜が咲かせし愛~』などの作品で人気のレオ・ロー(羅雲熙)さんが6月1日に、自身初となるコンサートを成都で開催。1.2万人分のチケットが数秒で完売し、注目を集めました。
その後も、トップ女優のバイ・ルー(白鹿)さんが初のコンサートを9月22日に上海で行った他、タン・ジェンツー(檀健次)さんも中国5都市を回るコンサートツアーを初開催。いずれもチケットは即時ソールドアウトで、グッズも軒並み完売するなど、歌と演技、マルチな才能を持つ俳優さんが活躍の場を広げています。
中国のテレビ番組を観ていると、バラエティー番組や年末特番などで、俳優さんが本格的なステージを披露し、その上手さに驚かれた方もいるのではないでしょうか。レオ・ロー(羅雲熙)さんやタン・ジェンツー(檀健次)さんもそうですが、中国ではボーイズグループなどでアイドルとして活動していた方が俳優に転身するケースが多く、実は皆さん演技だけでなく歌やダンスも堪能という方が多くいらっしゃいます。
また中国で演技の道を志す方は、専門知識が学べる演劇大学を卒業される方も多く、授業の1つとして歌も科目に入るとのこと。プロ顔向けの歌唱力を持つ方が多いのも納得ですね…!
たくさんのコンサートが開催され選択肢が増えた一方、同時に2024年はコンサート開催が原因と思われる事件も多く発生した1年でした。
2024年上半期にコンサートを最も多く開催したといわれる国民的歌手ジャッキー・チュン(張学友)。今年64歳になる彼ですが、上半期で計45回と、なんと4日に1回のペースでコンサートを開催!当初から無理なスケジュールなのでは?と心配されていたのですが、実際ステージ上でパフォーマンス中に転倒してしまったり、ツアー途中で体調不良により公演が数日急遽キャンセルされる事態となってしまいました。
日本でも単独コンサートを何度も成功させている人気グループ五月天(メイデイ)は、上海で8日間連続という大規模コンサートを開催。現場にいたインフルエンサーが公演後に、一部の曲を口パクで歌っていたのではないかと指摘し、管轄する政府機関が調査を行うという騒動に発展しました(中国では歌手の口パク興行を禁止する『営業性演出管理条例』という条例があります)。
他にも、歌手がきちんと歌っていないなど、コンサートのクオリティーを疑問視するファンが返金を求めたり、人気グループのコンサートチケットが開催直前になって大量値引きされクレームが相次ぐなど、加熱するコンサート開催が原因と思われる事件が多数発生しました。
背景には会場費や製作費、人件費などコンサート運営に関わる全ての費用が高騰していることがあります。
中国メディアの報道によると、2024年上半期に開催されたコンサートの内、わずか24%のコンサートが同時期の興行売上の6割を占めていたというデータもあるとのこと。(※3)
毎日どこかでコンサートが開催されているという競争過多な状況の中で、利益を上げられるようなコンサートは一部の超人気歌手に限られ、中堅クラスの歌手のコンサートは利益が出にくくなっている…という状況があるのかもしれません。
また、これだけコンサートの開催回数が増えた要因の1つに、地方政府が補助金を出して積極的に誘致活動を行っていることが挙げられます。人気歌手のコンサートを開催することで、観客はその地方に一定期間滞在することになります。その経済効果は非常に大きく、トップ歌手のジェイ・チョウ(周杰倫)が長沙で3日間開催したコンサートでは、1人当たりの消費額は約7万円で、長沙にもたらした経済効果はゴールデンウィーク期間の3倍にあたる約10億円だったとか。(※4)
各地方の文化旅行庁が投じるコンサート開催の補助金額も、400万円から7,000万円までと年々高額となってきています。
(※3)出典:道略音楽産業研究院
(※4)出典:長沙晚報