公開日 2023/04/15 19:30
変更日 2024/06/20 19:14
Ⓒ 2022 Seollem film, kt alpha Co., Ltd. All Rights Reserved.
釜山国際映画祭で、『パラサイト 半地下の家族』を超える衝撃作として注目された『高速道路家族』。その名の通り、高速道路で暮らす家族を描いた映画です。両親と10歳にも満たない2人の子供たちに待ち受ける結末は衝撃的で、チョン・イル(「太陽を抱く月」「グッジョブ」)の熱演が心を打ちます。(敬称略)
テントや着替えなどの荷物を背負い、高速道路のサービスエリアからサービスエリアへと徒歩で移動し、暮らしているギウと家族たち。
「財布を失くしてしまったので、2万ウォンだけ貸してくれませんか?」
優しそうな人を見つけては、ギウはこう言って、身重の妻や子供たちにも演技をさせ、お金をもらって、その日を食いつないでいます。
高速道路家族,チョン・イル
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ホームレスのギウ一家は、サービスエリアのトイレの洗面台で洗濯したり髪を洗ったり、少ないお金で食事をしたり、夜はテントを張って眠ります。
高速道路家族,チョン・イル
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高速道路家族,チョン・イル
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長女は9歳ですが、学校には行っておらず、すぐに駄々をこねる幼い弟の面倒をよく見ています。
彼らは、なぜ高速道路を暮らす場所に選んだのか…?
ソウル駅や龍山駅、江南駅といった繁華街で、「お金がないから貸してくれ」とよく言われたというイ・サンムン監督は、その人たちがどうやって生きてきたのか、どんな気持ちでいるのか気になり、住居に関連するドキュメンタリーや、過去の物乞い家族詐欺のニュース、さらにIMF危機によりソウル駅にたまったホームレス家族へのインタビューなどの事例を探し始めたそうです。
調査の中で監督は、彼らはみんな“人々から傷つけられた人たち”で、やがてその傷が世の中への怒りにつながり、社会の中での暮らしを諦めさせたのだと感じました。
かと言って、彼らは常に絶望しながら生活をしているわけではなく、集まって雑談をしたり、将棋を指したりと、それなりに生きる時間を楽しむ努力をしていました。
そこから、表面ではまるで旅をしているように生きるギウ一家を描くことにしたという監督。
高速道路家族,チョン・イル
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監督は、高速道路のサービスエリアには、食べ物や公共施設がある上に、周辺に小さな林のように作られた休息スペースまであるため、全てのことをこの場所で解決できるのではないかと気づきました。
そこで、“とある家族が設備の整ったサービスエリアで遊ぶように暮らしたらどうなるのか”と考えつきました。
産業化時代を象徴する“高速道路”と、伝統的な価値が込められている“家族”が出会って起こる特別なアイロニーが、本作のテーマの一つとなっています。