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【全話解説】ドラマ『あなたの番です -反撃編-』第11話、横浜流星扮する不穏な隣人の空気感

公開日 2021/07/29 17:30

変更日 2024/06/20 14:32

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人気若手俳優として不動の位置を占める横浜流星。その人気ぶりは日本を越えて韓国にも及んでいる。2020年には第15回ソウルドラマアワードでアジアスター賞を受賞。その受賞理由となった話題のドラマ『あなたの番です -反撃編-』(2019)で演じた「二階堂忍」役の謎めいた魅力に迫るべく、11話から全話を解説していく。

(C)NTV

ひとつのマンション内で繰り広げられる交換殺人ゲーム。誰もが「殺したい人」がいるものだという興味本位から住民たちが交換し合った名前の相手が次々殺害されていく。地獄のような信じがたい現実を前に、住民たちは怯えるしかなかった。自分が書いた名前の相手が殺されたら、次は自分が誰かを殺さなくてはならない。このゲームはそうした殺人連鎖の中で、次第に炙り出される人間の本性を暴き立てる。日本テレビ系「日曜ドラマ」で放送された『あなたの番です』で描かれるのは、あまりにも過酷な現実だった。

それにしても、一度はじまった殺人の連鎖は、なぜ収束することなく延々と繰り返されるのだろうか。そこには日常生活では隠された人間の深層心理が透けて見える。確かに誰にでも殺したい人はいるかもしれない。けれど、それを実際に行動に移すかと言われれば、ほとんどの人が殺害という行為には到らないと思う。こいつを殺したいという気持ちを抱くまでなら許されるが、それを実行した瞬間に殺人者は誕生する。その殺人者は後戻り出来ない。おそらく後悔を抱えながらも興奮状態を押さえられずに2人、3人と犠牲者を増やして行く。この後戻りできない感覚が諦めなのか、自暴自棄なのかはよく分からない。だが、彼らがその一歩を踏み出してしまったことや殺意のイメージを現実のものとしてしまったことは動かぬ事実である。

それはほんの些細な日常からはじまる可能性がある。例えば、女子高生二人が部活に憧れの先輩がいて、部活の帰り道、その先輩の家まで後を付いていくとする。後ろからやってくる存在を気にして先輩が振り返る。その度に彼女たちは「あっ、バレたかな?」と心をときめかせる。これが帰り道の女子高生二人によるちょっとした余興であり、遊戯である限り、健全である。だが、いずれか一人だけが先輩の後を付けたらどうだろう。誰か特定の相手に後ろを付けられる先輩は今度は恐怖にかられて振り返るようになる。そこには彼女たちによるゲーム性が消え、ひとりのストーカーが誕生する。ストーカーとしての一歩を踏み出してしまったこの彼女はもう後戻り出来ない。殺人者の心理と全く同じだ。今自分が考えていることや行動していることが一歩間違えばと、考えると恐ろしくなってくる。人生は紙一重である。

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WRITER INFOライター情報

加賀谷健